第九十四話 不死との戦い

≪北条 雷太 視点≫

「せんせー、俺らレベル50になったんだが、何でスキル使うとレベルが下がるんだよ!」

「私に言われましても…」

「ちっ、使えねーな!」

 森達がレベル50になったと喜んでいたが、レベル50で使えるスキルに不満がある様で、私に文句を言って来た。

 私も森を鑑定して調べたが、剣士レベル50で使えるスキルは武神剣ぶしんけんと言うスキルで、使用者の体に武神が宿り、一定時間ステータスが二倍に跳ね上がると言う強力なスキルだった。

 強力なスキルの代償が、レベルダウン5と言う、森達にしては受け入れられないものだった。

 流石に今回はレベルが5下がると言う事で、森達も安易にスキルを使う様な事はしなかった。

 レベルが下がるスキルを安易に使う事は出来ないが、森達はスキルを使わずとも十分な強さを持っている。

 喧嘩で培ってきた経験に加え、この世界で魔物と戦い続けてきた経験が確実に森達を強くしている。

 それに、私の賢者としての知恵と魔法が加われば鬼に金棒と言った感じで、誰にも負ける気がしない。


「やっと魔族との戦いが始まるぜ!」

「俺らの強さを見せつける時が来たべ!」

「さっさと終わらせてやんよ」

「そうだな、早く帰って女を抱かないとたまりまくってるからな!」

「「「ぎゃははははは!」」」


 私達は国境を越え、魔王国へと入っていた。

 森達は魔族達と戦えるのを楽しみにしている様だが、私は既にこの場から逃げ出したい気持ちでいっぱいになってる。

 その理由はこの景色にある。

 草木は枯れ果て、大地はひび割れていて凹凸おうとつがあり、まともに歩けるような場所ではない。

 空は曇っていて今にも雨が降り出しそうだし、空気もよどんでいる。

 不気味な雰囲気が周囲に漂い、今にも何か出て来そうな感じだ…。


 今回はアルロレーネ王国の軍が私達の後ろに控えていて、魔族との戦いが始まれば、軍も積極的に参加してくれる手筈になっているが…。

 私には後ろの軍が、督戦隊とくせんたいの役割も兼ねているのではないかと危惧している。

 私と森達のパーティーは強い事は確信しているが、魔族が弱いと言う事は無いだろう。

 いざとなったら森達を連れて、逃げ出す事も考えていなければならない。

 その際には、魔族を軍にけしかけるように動いて混乱させ、その隙に森達を連れて逃げ出す事にしようと思う。


「せんせー、あれは何だ?」

 突如として目の前の地面が至る所で盛り上がり、そこから白い人骨が這い出てきていた。

 ゲームなどに出てくるスケルトンだろうが、鑑定して調べてみる事にした。



名前: スケルトン

レベル: 65

職業: 剣士

ライフ: 275/275

マナ: 80/80

筋力: 94

体力: 55

器用さ: 29

素早さ: 27

知力: 20


スキル: 連続斬り、溜め斬り、流水剣、斬鉄剣、残影剣、武神剣

魔法: 無し


弱点 火属性魔法、浄化魔法



「スケルトンです、職業は剣士、戦士、槍術士、弓術士等で、魔法を使うのはいません!」

 森達にスケルトンのステータスと弱点を伝えた。


「スケルトンの分際で強すぎるべ!」

「俺らの敵ではないけどな!」

「せんせー、ライフがあるって事は、斬って殺せるって事だな?」

「恐らくそうかと思いますが、レベルも高いですし数も多いです。私も援護しますが注意して戦って下さい!」

「わーってるよ!」

 森達は三人で連携しながらスケルトンと戦い始め、私も森達の支援に徹する。

 スケルトンの弱点である火属性魔法と浄化魔法は、賢者である私はどちらも使える。

 その魔法を使ってスケルトンを倒す事は出来るが、スケルトンの数が多くマナが持たないだろう。

 多少倒すのに時間が掛かったとしても、森達に任せているのが正しいし、私も楽が出来る。

 軍からの援護として、火属性魔法がスケルトンに向けて放たれているので、私のマナは出来る限り節約しておき、いざという時の為に取っておいた方が良策だ。

 私は森達の後ろから離れない様に移動しつつ、全体の状況を細かく把握して森達に伝えて上手く戦わせていった。



≪藤堂 綾女 視点≫

「藤堂!ねぇ、藤堂ってば!いつものように指示を出してよね!」

綾女あやめちゃん、大丈夫?」

「大丈夫じゃない…恵茉えま、助けて…」

 魔王国に入り、いよいよ魔族との戦いが始まったわ。

 それは覚悟してたから良いのだけれど、あれは無理!絶対に無理!

 怖い、怖い、怖い、怖い!

 恵茉、助けて!!!

 私は恵茉にすがり付いて、助けを求めたわ!

 体は震えているし、足もすくんでいる。

 この場から一秒でも早く逃げ出したいけれど、それも出来そうにないわ…。


「細川さん、綾女ちゃんの代わりに指示を出して貰えませんか?」

「えっ!?私?私も怖いもん、絶対に無理だよ!」

浅井あざいさん、綾女ちゃんはホラーが苦手で、こうなってしまってはもうだめなの…」

「私も得意な方じゃないんだけど…、直江兄弟!」

「「はい!」」

「女子はこう言うの苦手だから、二人で頑張ってね!」

「勿論頑張るであるが…」

「二人だけでは厳しいでござるよ…」

「男でしょ!頑張ってよね!」

「「はい…」」


 恵茉は私を庇いつつ、私の仕事を他の人に回してみたけれど、全員あれと戦うのは嫌よね…。

 結局、直江兄弟の二人が前に出て戦い、他の女子達は後ろに下がって二人の援護をする事になったわ。


「このスケルトン、意外と強いであるぞ!」

「兄貴、スケルトンって、斬ったら死ぬのでござるか?」

「分からないが、それがし達は斬るしか能がないである!文句を言ってないで、斬って、斬って、斬りまくるのである!」

「分かったでござる!」


 直江兄弟が頑張って戦ってくれているのに、私が何も出来ないのは本当に申し訳ないと思うわ。

 でも、怖い物は怖いし、無理な物は無理なのよ!

 状況は恵茉が見てくれているし、直江兄弟が危なくなったら、恵茉や浅井達が助けに行ってくれているわ。

 それに、私達の後ろにいる軍も、積極的に攻撃してくれているわ。

 でも、数が多いし、倒しても倒しても、また地面から這い出てくるそうよ…。

 終わりのない戦いを何日間か続けていて、直江兄弟にも疲れが見え始めて来た頃に、空から何かが飛んで来たわ!


氷龍ひょうりゅうだ!!!」

 軍の方から声が上がり、その声は明らかに恐怖からの叫び声だったわ。

 つまり、あの飛んで来た氷龍と言うのは、私達の敵だと言う事ね…。


「直江兄弟、下がりなさい!!!」

 私は咄嗟に指示を出し、直江兄弟を後ろに下がらせたわ。

 その直後、氷龍が口から真っ白な息を吐いたかと思うと、私達の前面に白銀の世界が現れたわ…。

 私達と戦っていたあれも完全に凍り付き、動く気配は無いわね…。


「浅井、下がるわよ!私達まで氷漬けにされちゃうわ!」

「そうね、皆下がるよ!」

 私達は急いで後ろに下がって行くと、軍も慌てて後退し始めていたわ。

 そして白銀の世界はどんどん広がり、私達はこれ以上侵攻出来なくなってしまったわ。

 軍の方で撤退を決定し、私達はアルロレーネ王国へと帰る事になったわ。


 氷龍はアルロレーネ王国の味方じゃないみたいだけれど、私にとってはありがたい存在だったわ。

 でも、いつかはまたあれと戦わないといけないのよね…。

 それを考えると憂鬱になってしまうけれど、今は恵茉と一緒にゆっくり寝て嫌な事を忘れたいと思うわ。

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