灰色とひまわり

藍内 友紀

第〇話

〈〇〉

 ガザの子供たちはみんな、自分が大人になれないことをいる。

 ある日突然、働く場所や配給所が瓦礫になることも、食べるものが尽きて飢死にすることも、生まれたときから覚悟している。

 あるいはガザ地区を囲む壁の向こうから撃ち込まれる爆弾で家ごと吹き飛ばされことを、神様の思し召しだと考えている。

 死体は大抵、崩れたアパートの粉塵や焼けた土埃によって、灰色に染まっている。最期にこぼれた涙や血の跡だけが、肌色で描かれている。

 そういう死を嘆きはするけれど、大丈夫だといる。

 だって死んだ人はみんな天国にいくのだ。降ってくる爆弾によってなすすべもなく死んだ子供たちは──男の子限定ではあるけど、ハマースが殉教者として扱ってくれる。立派な額に顔写真を入れて、遺った家族に贈ってくれる。

 だから家族の、親族の、一族の誰かが生き残っている限り、忘れられることはない。自分が生きていたことを覚えていてくれる。

 だから、大丈夫だと思える。信じていられる。

 ガザの多くの子供と同じように、マナルはいつも自分にそう言い聞かせている。

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