第14話

わたしはエールくんの言葉をゆっくり噛み砕く。


『お礼が出来ない自分が嫌われてる、って思うのはアレク様が来る事を喜んでるって意味じゃないですか』


お礼が出来ないフレイルくんをわたしが嫌う、という意味に取れなくもない。

アレクが来る事を喜んでいた、と解釈出来なくもない。


確かにそうとも取れる。

そうとも取れるがそれは随分と良い捉え方すぎる。

うん。

そんなはずがない。

そんなはずは、ないのだ。

理解、出来ない。

フレイルくんがわたし、アレクが来る事を喜んでいた?

そんな莫迦な。


「フレイルくんはわたしの話なんて、聞いてくれない」


そうだ、そもそも、彼はわたしアレクに素っ気なかった。

…そこが良いのだが。

惚れた弱みというやつだ。


「なんの話するんですか?」


「そ、その…恋をしたのでどうすればよいのかの教本を」


人間と話す話題がそれしかなかったから。

そして知りたかったから。


「…アレク様の姿ででも?」


「そ、そうだが」


学ぶ為に書架はあるのだと、思うのだが。

学べたと、思っているのだが。


「…誰かに片想いしてるひとの話は楽しいですか?」


「…うう…だっ、だが、同一視してからは別の話題をするようにしているっ」


いや確かに、それは、途中で考えを改めた点だが。

しかしわたしが離せる話題なんて、恋と戦ぐらい。


「ま、まさか戦の話ですか!?」


「そ、うだが…?それと…好き子が出来そうだったが駄目だったという」


え、え、駄目だったのか?

何故?

え?

詳細に話せるというのに?


「アレク様っっ!駄目すぎですよ!フレイル先輩があんまりだっ!」


「アレク様ぁっ…よりにもよってそんな話題…嫌に決まってます!」


何故か怒られた。

何故だ。


そしてわたしをおいてけぼり、緊急会議が開始されてしまう。


「…駄目だ。アレク様はまだ人間の感情がまだ理解出来てないんだった。今回のお叱りも勘違いして逃げた訳だし」


「そうだね。それじゃあ、分かり易いように動いて貰えばいいんじゃないかな」


「どうするんだ」


「告白するんだよ」


「それだ」


「多分、というか、絶対好きだし」


「あ、俺分かったわ。なんでフレイル先輩が砦に来てたのか…心配でたまんなかったんだ…」


「なのに、アレク様は誰かを好きで、自分じゃない誰かに恋をしようとしてそんな話ばっかりしてくる…酷い…」


「ああ、酷い…と、言う事でアレク様」


「う、うむ…?」


「告白のお時間でございます」


ふたりの会議をただただ見守っていたわたしの前に、ハットくんが忠実な騎士と成りて跪いた。

エールくんは「用意、しなきゃ!」と部屋の奥へ消えてった。


何、え、なんだいハットくん。


え?


今、告白の時間と申したか我が騎士よ。

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