第13話
ちょっと力を入れようものならひしっとふたりがしがみつく。
ハットくんはともかく、エールくんは非戦闘員。
怪我をさせてしまう恐れがすごくある。
わたしは一旦本当に飛び立つのを諦めた。
わたしを掴む手は離れない。
「ハァハァ…あ、アレク様、確認させて下さい…」
「…なにをだい」
ハットくんが息を切らしながら恐る恐る訊ねてくる。
「ハァ…ふぅ…フレイル先輩は、アレク様を見て顔を真っ赤にしますか?」
問われ思い返す。
「ああ…発熱したように真っ赤になって…心配して熱を冷まそうと触れようとしたところを払い退けられ逃げられてしまった…ぐす…」
思い出すと胸に切り裂かれたような痛みが生じた。
触らないでと拒絶された。
フレイルくんに、きょぜつ、された…。
「それ以来、目も合わせてくれない、ですね?」
「…ああ…うつむいて…顔を背けて…近寄ると…一定の距離を…ぐず…」
「ご自身がめっちゃ良い匂いする自覚は?」
「…におい…?けものしゅうのことか?すまないくさくてみずあびしてくる…ぐすっ」
まさか体臭までもが嫌悪の原因?
はわわ、せ、聖なる湖畔に三日浸かれば、きっと綺麗になるはずだ。
きっと。
「後にして下さい。それより、手土産…本当に要りませんとか言われましたか?」
そう問われ、思い返す。
「…いや…言われてはいないが…」
「じゃあ、なんで手土産不要そうにしてる、って思ったんですか」
「それは…『いつもお土産を持って来てくださるのに…俺はまともな礼も言えぬ無作法ばっかり繰り返して俺は愚か者です!嫌われて当然なんです!』と、まだ白鷹とアレクが同一視されていない時に言われて」
つまりわたしの手土産はイクサバくんと被ってて、イクサバくんに勘繰られ嫌われてしまうと心配していた、という事。
わたしはそう理解したのだが?
なんだかふたりの反応が、違う。
「えぇ…アレク様…」
「アレク様ぁ」
「え?え?」
ふたりがわたしに残念なものを見るような視線を向けてくる。
わたし、何かしただろうか。
ハットくんが呆れた様子でわたしに告げる。
「それはフレイル先輩が、アレク様にお土産貰ってるのに失礼な態度しか取れなくて困ってるって、白鷹様に相談したんですよ?…なんて答えたんですか」
「…や、止めるように伝えよう…と」
だ、だってイクサバくん、に嫌われてしまったら可哀想じゃないか。
フレイルくんを不幸せにしたくないから。
でも…。
その時フレイルくんは安堵したような、寂しそうな表情を浮かべていた。
わたしは迷惑行為が止まって良かった、でも物はちょっと欲しいかも、というとこかと思ったのだが。
「…寂しかったでしょうね…それ…楽しみにしてたのに…」
「たの、しみ…?」
「お礼が出来ない自分が嫌われてる、って思うのはアレク様が来る事を喜んでるって意味じゃないですか」
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