黎明

可惜夜

黎明

少し身震いのする寒さの中、モザイクアートのようにちりばめられた明かりは僕を照らすことなく、ただ自分達の存在を知らせるために煌々と輝いていた。

まるで、背比べをするように建っているビル群は自分の高さを自慢するように航空障害灯を光らせている。

星々は街明かりに負けないように夜空で燦燦と燃えている。

夜独特の張りつめた空気が漂う空間に、エアコンの室外機の音が永遠と聞こえる。

時々思い出したようにカラスの鳴き声が僕の意識を連れ戻す。昼間の喧騒は嘘のように静かだ。

さて、僕が今いるこの建物はそれほど高くない。しかし駅前のビル群から少し離れた閑静な住宅街の中では、5階もあるこの建物は存在感を放っている。

そこの屋上から見える路地に規則正しく並んでいる街灯は日本の生きやすさと生きにくさを内包しているようで気味が悪い。

あぁ、もう夜が明けてしまう。また、現実に戻らなくては。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

黎明 可惜夜 @kurep

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ