フレジエで甘美なひとときを ~偽り王子の洋菓子店〜

小桃 もこ

1 神業接客と淡い初恋

第1話 プロローグ



 色濃く群れて騒ぐ沿道のツツジってクラスの派手な女子たちみたいだな、となんとなく思う初夏のその日。


 カチンコチンに緊張しながら、私はそのお洒落なダークブラウンの扉を押し開く。


 金色の取っ手は金色というよりももっと深い、アンティークっていうのかな? つや消しみたいになっていて、派手じゃなくて、上品。


 はめ込まれたガラスは中が見えないようにカット加工されたものでチラチラと外の陽光を反射する。



 コロン



 初めて聴くのにどこか懐かしいようなドアベルの控えめな音。



 思えばあれが、はじまりの音だった────。




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