4話

 私の名前は愛川愛音。とてもかっこよくて、とても優しい彼――和泉明希斗ことあきくんの彼女。


 今、私たちは私のお家で同棲中です。

 朝起きても隣にあきくんがいて、寝るときもあきくんがいる。そうです、私は一日中大好きで愛しくて堪らない彼と過ごせるのです。これ以上の幸せがあるでしょうか? いえ! あるわけがありません。


 え? 一日中彼が家にいると言うことは、彼は無職なんじゃないのかって?

 そうですよ? 私が彼を養って、お世話をしていますよ? それがどうかしました?

 彼が無職だから、何だと言うんですか? いいじゃないですか。

 大好きな人と一日中一緒にいれて、私が彼を生かしているんです。私が一から十まで彼のお世話をしているんです。これが、私にとっての幸せなのだから、誰かにあーだこーだと言われる筋合いはありませんよね?


 なので、放っておいてください。私と彼の世界に土足で勝手に入ってこないでください。



 彼と出会ったのは中学生の頃です。当時、私はクラスの子から、よく面倒事を押し付けられていました。そんなある日、ノートを職員室に待っていく途中に足を滑らせ落としてしました。

 周りに人はいましたが、誰一人と助けてはくれませんでした。別に誰かが助けてくれるなんて期待はしていませんでした。ですか、たまたま近くにいた彼だけは私のことを助けてくれました。


 その時からでしょうか、彼の事を気になり始めたのは。

 私と彼は同じクラスで、いつの間にか私はよく彼のことを見ていました。

 彼は基本、誰とも過ごさずに一人でいることが多く、休み時間は小説を読んでいました。


 私は彼がどんな本を読んでいるのか気になり、移動教室の時に、わざと忘れ物をし、教室に取りに行きました。その時に、こっそりと彼の鞄を開け、読んでいる本のタイトルを見ました。


「異世界行ったら、いつの間にか無双していた件」


 すぐにノートにメモをし、その日の放課後、本屋さんに買いに行きました。

 その日から、私は密かに彼と同じ本を読むようになりました。正直、本の内容の面白さは分かりませんでした。ですが、兎に角彼と同じものを読んでいるということが嬉しかったのです。


 次第に“気になる”から“好き”と言う気持ちに変わり、もっともっと彼のことが知りたくなりました。


 まずは、彼の家が知りたいと思い、帰りこっそりと彼の後をつけ、家を調べました。彼の家は、学校から徒歩十五分の場所にありました。


 私の家と彼の家は少し離れていましたが、朝早く出れば、間接的に彼と一緒に登校することができました。


 彼を好きになってからというものの、私はクラスの子から面倒事を押し付けられそうになっても、断れるようになりました。

 だって、彼のことを見れなくなるからです。断れるようになったのも、きっと彼のお陰ですね。


 ある日、席替えをし、なんと彼と隣同士になれました。これだけで、もう毎日学校へ行くのが楽しみになりました。


 朝来ても、授業中も、休み時間も、昼食時も、ずっと横で彼を見ていられ、感じられました。

 ですが、中学を卒業したら彼とは離ればなれになってしまい、急に毎日がつまらなくなりました。


 辛くなったときは、こっそりと彼のお家近くに行き、遠くから彼を見ていました。


 それから数年が経ち。彼は一人暮らしをしてしまい、会えなくなってしまいました。そして、私も適当に一人暮らしを始めました。


 私は中学生の頃から小説を読むことを止めずにおり、気がついたら小説家になっていました。印税で生活できるくらいまでになりましたが、暇なのは変わりません。


 ふと彼の事を思い出すこともあり、私は何気なく出会い系をやってみました。こんなので、彼に会えるわけもないのに。


 適当に男の人を見ていると、『アキ』という名前を見つけました。何となくは気になり、私はメッセージを送りました。そして、会うことに。


 奇跡が起きました。なんと、相手は――ずっとずっと求めていた彼だったのです。彼は私のことを覚えてはなさそうでしたが、取り合えず彼に会えたことが嬉しく、私は彼を家に誘っていました。


 大好きな彼と二人きりということもあり、緊張をし、お酒を飲むスピードが早くなっていました。

 そのせいで酔ってしまい、私はもう勢いに任せ、彼に沢山スキンシップをしました。

 そして、キスをし、彼と一つになっていました。


 朝、目が覚めると、隣に裸の彼がおり、勿論私も同じく裸です。昨日ことを思い出し、顔が熱くなりました。


 ですが、ここで終わらせていけないと思い、気合いを入れるためにも彼に朝ご飯を作ってあげることにしました。


 彼が目を覚まし、一緒に朝ご飯を食べ、私は彼に数年越しの告白をし、結果――彼の彼女になれました。


 もう嬉しくて、いつの間にか私は彼を襲っていました。てへ!

 そして、彼も私も二十五歳になった今年から、同棲を始めました。


 最初にも言いましたが、彼といられるというだけで、毎日が楽しくて幸せで仕方がありません。


 あの時、彼が私を助けてくれたから、今の私があるといっても過言ではありません。

 彼がこの世に生まれてきてくれたお陰で、私の人生が充実したものになりました。


 これからも、私と彼は死ぬまで……いえ、死んでも、生まれ変わっても、ずーーっと共に生きていきます。


「大好きだよ、私のあきくん♡」


🖤 ♡ 🖤 ♡ 🖤 ♡


 突然かも知れないが、俺と愛音は結婚をし、恋人から夫婦になった。


 女の子の子供が一人おり、名前は『亜希音あきね』だ。


 そして俺はと言う、一応専業主夫ということになっているが、実際は愛音に養われている無職だ。

 愛音は、書いていた小説がアニメ化、映画化となり、元々人気だったのが、もっと人気になった。


 少しは変わったこともあるが、俺も愛音も亜希音も皆幸せに暮らしている。

 変わったことと言えば、愛音の俺に対する愛が結婚、出産を経て、さらに深まった。


 最近では、もう一人子供が欲しいと言っている。流石に、亜希音がもうちょっと大きくなるまで待ってほしい。


 というわで――


「俺がどうしてこんなにも彼女に愛されているのかわからない」


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俺がどうしてこんなにも彼女に愛されているのかわからない 冬雪樹 @fuyuki_yuki

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