※ 第10話 磔にされた蝶


「よ、とぁ! はぁっ!」



放課後、今日も今日とて塁の家でゲーム対決。

私は今日も拘束されている。

塁はもう私を怖がってない筈だけど、部屋に入るや否や嬉々として枷を引っ張り出してきた。

またイタズラするつもりか? と思ったけど、拘束指示には従うと言った手前素直に手足を差し出した。

これで私の両手両足は短い鎖で繋がれた。

これでも問題無く遊べるんだからテレビゲームって凄いよな。



「よっしゃー!」


「くそ……」



私に勝った塁は大はしゃぎだ。でも動き過ぎて倒れそうになってる塁を体で支えなかったらもう少し善戦出来てたと思う。


……剥き出しの肩が触れた二の腕が熱い。

暑いから、と早々に下着姿になって、それでもゲーム中に動き回るから全身汗まみれで。

しかも朝の一件以来、妙に距離が近い気がする。

特に動き回った試合の後なんか、私に寄り掛かったりしてくるし。

……まさか拘束されてて助かった、なんて思う日が来るとは思わなかった。



「よし、次負けた方が罰ゲームな!」


「おー」



下着姿になった。

罰ゲームも提案してきた。

私が拘束されてるとは言え、それでも以前と同じ気の置けない関係に戻った。



「やりぃ! じゃ、ギンは罰ゲームな!」


「なにすりゃ良いんだよ」


「ちょっと待ってろー」



塁は妙にソワソワしながら私に躙り寄って……枷のバックルを外してきた。

拘束されてる私にイタズラするんじゃなくて、逆に拘束を解いてきた……?


疑問符を浮かべる私を尻目に全ての枷を外し終えた塁が一つ深い息を吐いた。



「ギン」


「なんだよ」


「ベッドに寝ろ」


「は?」


「は、はやくっ!」



……なんだ?

私をベッドに寝かせて何をするつもりだ?

妙に緊張してるし、声も上擦ってる。

疑問が尽きないけど、取り敢えず塁に言われた通りベッドに寝転ぶ。



「ほら」


「う、動くなよ……」



塁は息を荒らげ、少し震えながら……枷のベルトをベッドの角に巻き付け始めた。



「何してんだ?」


「い、良いからっ」



塁の妙な行動に困惑する。

……まさかとは思うが、私をベッドに拘束するつもりか? いや、でもなんで……



「出来た……」



そうこうしている内に、予備の枷も使ってベッドの四隅に枷が装着された。

これはもう、そういう事……だよな?



「塁……」


「枷を付ける時は命令に従うって約束しただろ!?」



私が何か言うと、すぐに焦ったように……そして泣きそうな顔で返してくる。



「……分かった」



不穏ではあるけど約束は約束だ。

私はベッドに寝転がって、やりやすい様に手足をXの字型に広げる。

そして予想通り、塁はその手足を四隅の枷に繋いでいく。

私はベッドに磔にされて一切の抵抗を封じられた。



「出来た……」


「満足したか?」


「……」



私の問いかけに塁は答えない。俯いて、何かを呟いている様だが聞こえない。

ただその瞳は揺れていて……私よりも動揺している様に見える。



「塁?」



私が呼びかけると、ビクリと塁の肩が大きく跳ねて……そして俯いたまま口を開いた。



「こ、これなら……」


「ん?」


「……これなら逃げられないだろ?」



顔を上げてそう言った塁は今にも泣き出しそうで、それでいてどこか高揚もしているような……



「んっ」



塁は私の腹の上に座った。その重さからもコイツが如何にちっこいかを感じ取れる。

……まぁ、今の私じゃそのちっこい塁に乗られたところで何も出来ないんだけどな。



「ギン……っ」



塁はその手を私の胸に伸ばして恐る恐る触れてくる。

反射的に腕を動かした瞬間こそビクッと跳ねたけど、私にそれ以上の抵抗が出来ない事が分かってからはその手付きも大胆になってきた。



「ふ、ふふ……っ」



擽ったくて身動ぎするけど、塁は構わず手を動かすばかりだ。

細い指が撫でる度、ゾワゾワと背筋に妙な感覚が走って背中が粟立つ。

……だけど、それはまだ良い。それだけなら良いんだ。

姿勢は違えど、拘束されて胸を触られる……なんて事は以前にもあった。


問題は……塁の雰囲気からしてそれ以上の事をしでかしそうな事。

そして、それ以上の行為を私は望んでいないと言う事。

確かに塁に好意はあるけど、こんな形で触れ合いたい訳じゃないんだ。



「……っ」


「おいっ!」



服の上からじゃ物足りないとばかりに、塁は私のシャツの裾に手を伸ばしてきた。

制止の声を上げたけど、それは無視されてそのままシャツが捲られる。

そして私の背中に細い腕を捩じ込んできて、少し手間取りながらブラのホックを外してきた。

コイツスポーツブラしかした事ないからな……



「あは……っ」


「ん……っ」



普段は子供体温の癖に、今は緊張しているのかそれとも汗ばんでいるからか、その指先は妙に冷たくて……それが私の胸を這い回る。



「っ」



塁の指が胸の先端を掠める度、ゾワゾワと変な感覚が走って思わず息を飲む。

そして私が反応を示す度に塁が嬉しそうに笑うのが見えて……私は何も言えずに顔を背けた。

そんな私の様子を見ながら塁の手はどんどん大胆になっていく。



「ここ……」


「やめろ……っ」



自分の意志に反して固くなったそれを、塁は遠慮がちに摘んできた。

自分の口から甘く上擦った声が出て、それを聞いた塁はどこか満足そうに口の端を吊り上げる。



「気持ちいいんだ……?」


「やめろって……っ」



塁の手付きがだんだんと大胆になっていく。

私の制止の声も無視されて、その指は私の胸を揉み、先端をクニクニと弄ってくる。



「……っ!」


「んむ……っ」



そんな私の様子に気を良くしたらしい塁は身を屈めて顔を近付けてきた。

そしてそのまま私の胸に吸い付いてくる。



「しょっぱい……」


「いい加減にしろ! これは……やりすぎだろ……っ」


「でも勃ってんじゃん。気持ち良いんだろ?」


「んく……っ、これは、生理現象で勝手になってるだけだ……感じてる訳じゃない」


「……ふーん」



私の言葉を聞いた塁は、納得したのかしてないのか……少し考える素振りを見せて腹から降りた。

分かってくれた……とホッとしたのも束の間。

次の瞬間、私の下半身……正確にはジーンズを締めているベルトに塁の手が掛かった。

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