第27話 備忘録とサイコホラー改稿してねマ猫

【マ猫へ】

・” もしかして、彼女さんですか? ” 

カラカラの口の中から出ていかない言葉、血の気が失せていく感覚

・ギフテッド

・「るるお姉ちゃん、笑った方が可愛いのに。イーってしてみて! ほうやっへえ、ひー」「………………ふひぃ~」

・事故物件のりなこさん(里菜子)

・大天使、主天使、白猫



『届けたい想い』



 ……がらんとした部屋。


 ところどころ手が止まってしまう。もう踏ん切りはついたんだけどなあ。やっぱりダメージが大きいや。




 んっしょ。




 気持ちの整理がついたとはいえ、二人の想い出がいっぱい詰まった物を見ると片づけが進まなくなってしまう。


 部屋の大掃除をしてる時にも似てる。とっておいた雑誌を見つけて、思わず時間を忘れて眺めちゃったりして、あはは。




 んー、ここも。




 そうだそうだ。このバッグ、あの人からの初めての誕生日プレゼントだったよね! 嬉しかったなあ。一緒に出かける時は必ず持っていったっけ。


 あ、スマホここに入れといたんだ。あの人が『世界に一つだけしかない、僕ら二人だけのスマホだよ』って言ってたなあ。キザだね。でもそういうところも大好きだった。




 んぎぎ。




 懐かしいなあ。どれもこれも私、画像の中で顔いっぱいに笑ってる。テーマパーク、海、ナイトクルーズ、ドライブ……あ、お泊りの時も撮ってたんだっけ。うわ、やーらしー。


 お泊り、楽しかったなあ。数えるほどしかないけれど、そりゃそうだよね。奥さんの目を盗んで外泊なんてそうそうできるはずがない。それでも私との時間を作る為に頑張ってくれたんだと思うと泣けてくる。




 ……、……!! ………………ふう。




 みんな、騙されてたんだよとか奥さんにバレてよかったんだよとかいろいろ言うけど、私は今でもあの人のことが好き。だってこの世界で、人がいっぱいいる中で私をいいって言ってくれて、たくさんの愛情と温もりをくれたんだよ? 


 きっと奥さんがいるって知ってたとしても、好きになっちゃってたと思う。奥さんに申し訳ないし、あの人から『もう会えない』って言われちゃったからお別れしたけどさ。




 うぇい! よっし!




 私はあの人の何になりたかったんだろう、何を望んでいたんだろう。恋人? 奥さん? 家族? あの人と離れて、ずっと考えてた。そして気がついたんだ。形なんてどうでもいい。あの人と寄り添って生きていたかった。


 支えになりたかった。ありったけの愛情を、気持ちを、私の全てをあの人に捧げたかった。好きだった。本当に本気で愛していた。あの人の人生に彩りをもたらす何かでありたかった。でも、それが許されないのなら……せめて、この胸の中にある愛情の全てを伝えたい。




 くらくらしてきた。でもこれで最後。

 あの人が一番ほめてくれたココは欠かせない。



 

 あの人に逢いに行くどころか声を聞く事さえもうできない。だったらこうするしかないじゃないか。私の気持ちを、想いを、あの人に届けるんだ。あの人がたくさんほめてくれた一つ一つが、あの人のこれからの人生の糧になればいい。今でも好きなんだよってほんの少しでも伝わってくれたら嬉しい宅配便は頼んだし外に出しておけばお金はクレカ払いだから黙って持ってってくれるもんねあの人がこれを見たら喜んでくれるかな大事にしてくれるかなこんなに僕の事を想ってくれていたなんて何て幸せ者なんだって考えてくれるかなもしかして君がいないと僕は生きていけないって私のもとに戻ってきてくれるかなでもごめんねもう私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私















 ぎゃあ






























「課長宛てに冷凍の荷物が届いてるから伝えておいてくれってビル管管理室の人が言ってましたよ! いいなあいいなあ、美味しそうなものだったら俺にも分けてくださいよ!」

「僕宛てに? ま、うちの奥様と娘の好物じゃなかったらかまわないよ。僕の家庭内順位は愛する家族が上だからね」

「やった! 蟹だったら最高!」

「ははは。……しかし誰からだろう、中元、歳暮の季節でもないのにクール便、か」































『次のニュースです』















『××区のマンションで、若い女性の遺体が発見されました。遺体は損傷が激しく、現場の状況から自殺と他殺両方の線で捜査が進められる模様です。女性と連絡が取れない、と家族や勤務先からの相談を受けたビル会社と警察が……』















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る