絶望の和風鬱ゲーに転生したけど、全力でフラグをぶっ壊してヒロインを救う! そして主人公の闇堕ちを防ぐ!
イコ
序章
俺、
冷たい雨が夜の森に降り注ぐ中、互いに命を奪い合う。
俺の手には二丁の魔銃が握られ、奴の手には妖魔を打ち倒してきた黒刀が光っている。
「おい、真! 戻ってこいよ!」
闇に包まれた木々の間、雨音がすべてを包み込み、激しい鼓動が胸を打つ。
足元には泥が広がり、雨水が混じって滑りやすくなっている。
『あさぎり……』
妖魔になった奴の声が、雨の中で響くと同時に、黒刀が雨粒を切り裂いた。
俺はとっさに体をひねってかわすが、その斬撃の風圧だけで、冷たい雨が吹き飛ばされ、頬に鋭い痛みが走る。
「くそッ! 結局、闇堕ちしやがって! お前をそんな風にしないために俺は、俺たちは頑張ってきたんだろ!」
魔銃に魔力を込め、真に向けて発砲した。
青白い魔弾が闇を貫き、真の方へと向かう。しかし、その瞬間、黒刀が鮮やかに動き、魔弾を切り裂いた。
「……やっぱり、強いな。くそ! 主人公補正かよ!」
俺の声は雨音によってかき消される。
真は、既に魔銃の射程を見切っていた。これまで共に戦ってきた仲間だったからこそ、その強さも弱さも、すべてが記憶に刻まれている。
だが、今の奴は、かつての真じゃない。
闇堕ちしてしまった奴は、かつての優しさや人間性を捨て去り、ただ妖魔として、破壊と死を求める存在になってしまった。
それでも、俺は真を止めたい。
どんなに酷いことをしても、俺にとって真は……親友だった。
「行かせない……!」
再び魔銃を構え、真の動きを見極めながら慎重に狙いを定める。
今度は撃つべき機会を待つ。奴が黒刀を振り下ろした間合いを狙って、その一瞬の隙に全てをかける。
だが、奴はその隙を与えてはくれなかった。
奴は素早く間合いを詰めて、こちらの手の内を封じてきた。闇に溶け込むような動きで、俺の目の前に迫る。
「速い……!」
瞬時に体を反らし、なんとか真の一撃をかわすが、その勢いで俺は後ろへと転倒した。泥まみれの地面に背中が叩きつけられ、冷たい雨が体中を打つ。
俺は立ち上がろうとするが、そこに奴が追撃を仕掛けてきた。黒刀の刃が肩をかすめ、激痛が走る。
「ぐっ……!」
肩口からは血が流れ、温かい液体が雨に混じって流れ落ちる。
続けざまに奴の蹴りが腹に食い込む。
それでも、俺は歯を食いしばって立ち上がろうとした。
ここで倒れるわけにはいかない。俺が真を止めなければ、奴は完全に深い闇に堕ちてしまう。
「まだ……終わらせない!」
俺は両手に持った魔銃を再び構え、体勢を整える。だが、奴はさらに圧倒的な速度で迫ってきた。魔銃の一発目を奴は黒刀で弾き、二発目もまた同様に弾かれる。
「くそっ……!」
再び後退しながら、奴の動きを読み、何とかして一撃を与えようとするが、その圧倒的な力に押され続けていた。
『あさぎりたくまーーーー!!!』
奴の冷たい声が雨に溶ける。
真の目には、もはや、かつての仲間としての情など微塵も感じられなかった。
俺の体は限界に近づいている。
肩の傷は痛みは増して、両足は泥に絡め取られているようで、うまく動かせない。それでも、俺は真を止めるために戦い続けるしかなかった。
「真……頼むから、戻ってきてくれ」
俺の言葉は虚しく響く。奴は刀を構え直し、再び向かって突進してきた。
実力は向こうが上で、奴の圧倒的な力に抗う術を失いつつあった。
でも、俺はここで諦めるわけにはいかない。
「くそっ……!」
最後の力を振り絞って、奴の黒刀をかわして、魔銃を放つ。しかし、その瞬間、奴の黒刀が俺の腕を斬り裂いた。
「があっ……!」
右腕が飛ばされて激痛が走り、魔銃が宙を舞う。右腕からは大量の血が溢れ出し、視界がぼやけていく。その場に倒れこみ、泥にまみれながら息を切らしていた。
「……まだ、終わりじゃない」
必死に立ち上がろうとするが、体が言うことを聞かない。俺の目の前に立つ真の姿は、もはや闇に飲まれたかのように冷たく、暗い。
『あさぎりたくま!』
奴は俺の名を叫びながら、刀を振り上げた。その一瞬、俺の中にこれまで積み重ねてきた全ての後悔が押し寄せてきた。
俺は何をしていたんだ? もっと早く真を助けられたんじゃないか? 俺がもっと力を持っていれば、こんなことにはならなかったはずだ。
「行くな……真! 頼むから、行くな!」
俺は泥の中に這いつくばりながら、必死に叫んだ。
真の顔には、一瞬だけ迷いが浮かんだように見えた。だが、それもすぐに消え去り、冷たい視線が突き刺さる。
『たくま』
奴は、俺の胸に黒刀を突き刺した。
「行くな……!」
俺の声は雨の音にかき消されていく。視界はぼやけ、体は動かないまま、地面に沈んでいった。
もう俺の声は届かない。奴の背中が闇に消えていくのを見ながら、心の底から後悔していた。
真を止めることができなかった。
必ず救い出す。どんなに深い闇に堕ちたとしても、真を諦めることはしない。
雨は止むことなく、俺たちの戦いを静かに見守り続けていた。
その光景は、ゲームの世界で闇堕ちした主人公である神楽真が、親友である朝霧拓真を殺害する最後の未練を断ち切る結末の場面。
「うっ!」
俺はそこで目を覚ます。
びっしょりと汗をかき、親友であり最後に真によって殺される朝霧拓真として、ゲームの世界に転生していた。
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あとがき
どうも作者のイコです。
今回は、とにかくずっと書きたいと構想を練っていた鬱ゲーを題材にした話を書きたいと思います。
鬱展開や、胸糞展開を入れたいと思います。苦手な方には申し訳ありませんが、一つの挑戦として書いていきたいと思って執筆をしました。
世界観や設定も色々と考えながら書いていきますので、更新が遅くなってしまいますが、どうぞ暇つぶしの一つとしてお付き合いいただければ嬉しく思います。
誤字脱字報告、文章のおかしい箇所や、名前間違いなど、いつもながら確認していても見落としてしまうこともあるので、どうぞご報告いただければ嬉しく思います。
それでは、和風ファンタジーにどうぞお付き合いくださいませ。
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