22.無法地帯

「おかえり、クラウド」


 私がクラウドにおかえりを言うと、


「おつかれ。まぁ座りなよ」


 プレセアが椅子として使っている長い丸太をポンポンと叩いた。


「失礼します」


 と少し離れてプレセアの横に座るクラウド。


「差しつかえなければ盗賊たちから得たの地の情報を共有したいと思います。よろしいでしょうか?」


 クラウドは私たちの視線が自分に集中しているのを悟ると、得た情報を話していいか聞いて来た。


 私はクラウドに盗賊たちから、この世界に関する情報を聞いてくるようには言っていない。


 それどころか思い付きもしなかった。

 

 だから『偉いね』って感じで褒めようとしたんだけど、プレセアが当たり前のような顔をして聞いてたからやめた。


 クラウドも同じ顔をしてる。


 思い付かなかったのは私だけみたい。


 あぶない。あぶない。


 みんなを纏めるリーダーのなのに恥をかいちゃうところだったよ。


「え、ええ……お願いするわ」


 私がお願いすると、クラウドは一礼してから話し始めた。


「俺たちが今いる場所、ユミル村ですが、クリザリアという王国の南西に位置しているそうです」


「クリザリア王国? 聞いたこともないわね。国名すら知らないんだから村の名前を知らないのも当然だわ」

 

 とプレセア。


「王都や他の村や町の情報はあった?」


 と私。


「はい、王都となるダーナは国の中心部に位置し、十数個の村と町がダーナを囲むように点在しているそうです」


「なんだ。それだけの居住地域があるなら思ったよりも少しは国として機能してそうじゃない。未だに救助が来ないから無法地帯なのかと思ってたわ。これならガキたちの受け入れ先も直ぐに見つかりそうね」


「それが、統制が取れているのは王都であるダーナだけのようなのです」


「王都だけ? どういう事? 外にある村や町に対して国は何もしないって事かしら?」


「何もしないわけではありませんが、基本的に税金や資源などの徴収をするだけで王都の外で起きた犯罪を国が取り締まる事はないそうです。外で犯罪を犯した者の中には王都で追放刑を受けた者もいますが、同じく国は関与しません。罰として王都を追放されても、監視されることもなく野放しになっているとの事。ユミル村を襲った盗賊たちは正にその追放された者たちでした」


「犯罪者を追い出すだけ追い出して後は現場にお任せってわけね。前言撤回、普通に無法地帯だわ」


 プレセアは呆れた顔をして言った。

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