16.勉強になった

 捕らえられていた子供たちは8人。


 男の子が5人で、女の子が3人……。


 逃げられないように鉄格子てつごうしおりの中に閉じ込められている。


 鉄かぁ……いけるかな?


「ふんぬ!」


 私は人が通れるように鉄格子を掴んでひん曲げた。


 うん、いけた。


 片手で人を投げられるくらいだから鉄格子もイケちゃう気がしたんだよね。

 

「もう大丈夫よ。安心して」


 と言ったものの、子供たちは脅えながら震えてる。


 檻から出ようとしないどころか、更に奥へ隅へと移動し出した。


 状況が状況だけに最初から脅えてる感じはしたけど、私が来てからの方が怖がっているようなそうじゃないような……。


 まだ周囲に盗賊がいるのかと思い、振り返ってみたけど誰もいない。


「どうしたの?」


 心配して檻の中に入って近付くと、子供たちは、おしくらまんじゅうをするように互いの身を寄せ合った。


 出来るだけ私から離れようとしているようにも見える。


 え? もしかして私? と冷静に考えてみる。


 子供たちにとって怖い盗賊を片手で投げ飛ばし、鉄格子を素手でひん曲げる女。


 うん、怖い。かなり怖い。


 子供たちからしたら、私は山姥やまんばに見えていてもおかしくない。

             

 ※山姥(やまうば、やまんば)奥山に棲む老女の怪


『凄い』とか、『かっこいい』とか、『美人』って言われるのを期待していた自分が恥ずかしい。


 なるほど。私の小説には無かった展開だ。


 こういうパターンもあるのね。


 勉強になったわ。



 †



「ちょっと力が強いだけで私は優しいお姉さんよ。マリアちゃんに頼まれてあなた達を助けに来たの。だから安心して。脅えなくてもいいのよ」


「……ほ、本当に?」


「本当よ」


「ほ、本当の本当に?」


「本当の本当の本当よ。もう一つおまけに本当よ」


 自分の語彙力の無さを痛感しながら、子供たちを説得すること十五分。


 盗賊を投げた倍の時間をかけて、何とか助けに来た強くて綺麗なアリシアお姉さんという事をわかってもらった。


「それじゃあ、こんな所にいつまでもいないで早く帰りましょ。マリアちゃんが待ってるわ」


「「はい!」」


 私は子供たちを連れて洞窟を出た。


 洞窟の外にはクラウドと、クラウドに殴られて顔がボコボコになった盗賊たちが積み重なって山が出来ていた。


 盗賊の手足は逃げれないように拘束されている。


 死んではいないみたいね。


 とりあえず盗賊たちの事は後にして、まずは子供たちを村に………あ!


 しまった。帰りの事を考えてなかった。

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