この季節に想うこと

悠真

思い出を消していく

 明日から僕は3日ほど旅に出ます。


 かつて東京都中野区や埼玉県朝霞市に住んでいましたが、それらの生活拠点だったあたりを中心に歩き回る予定です。


 それに先立ち、十数年ぶりに連絡を入れた相手がいます。

 僕が初めてスマートフォンを持ったのが、2019年ごろだったのですが、LINEで「知り合いかも」で半年ほど前に表示された女性です。

 20年前、同じ飲食店でアルバイト仲間として出会いました。


 東北の大震災時に彼女から連絡があって、それ以来です。


 ところが、返信がありません。

 既読もつかないので、どうやら僕には関心がなくなったようです。

 たまたま彼女と出会った店のある街へ行くことになったから、黙っているのもつれないだろうし、あいさつがてらメッセージを送ってみたのですが、放置されています。


 友人としてとても親しくしていて、彼女の結婚披露宴にも誘われたことがあったくらいで、それで震災時も夫の会社で寄付金集めているから協力してもらえたら、とメールが来たこともあったのですが、もう気持ちのつながりがないようです。


 返信あるかないかは正直五分五分くらいに思っていましたが、今のところ、残念な方になりそうですね。


 

 僕は今、前の職場を辞めてキャリアブレイクといったところなのですが、年3日ほどしか休めないところだったので、この機会に自分がプロのロックボーカリストになるという夢を持って上京したころの振り返りをしておこうとこの度行くことにしました。

 リセットして新しく仕事を見つける前に、あの新しく始まった地の風景を眺めておきたいという衝動です。

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