レイブンリリィ・ナイト〜借金返済して身体を買い戻したら、何故か黒髪銀眼の美少女だった。〜

アイズカノン

第1話

 荒れ果てた大地。

荒廃したコンクリートの森林。

土くれになった瓦礫の山に外骨格パワードスーツを来た1人の男性が立っていた。

〈レイブン、お疲れ様です。〉

『そのレイブンっていうのやめてくられないか……。俺には似合わない名前だ。』

 パワードスーツの男性は黒い鎧に羽のように生えたケーブルでいつしか戦場の烏レイブンと呼ばれるようになってしまった。

 そんな彼の傍らで常に見守っているのは第三次世界大戦の最中に作られた精霊AI【エアリア】。

赤い光が流れる妖精のような羽の生えたひし形の物体が今の彼女の身体である。

〈これでようやく身体を買い戻せますね。レイブン。〉

『あぁ……、そうだな。』

 彼にとって身体を買い戻すのは彼のかつての雇い主からの願いで悲願だった。

そんな想いを背負ってここまで生きてきた彼にようやく一区切りがつこうとしている。

〈ピピ……、索敵に感あり、おそらく今更来た増援でしょう。対処しましょうレイブン。〉

『あぁ……。』

 迫り来る武装ドローンの大群はまるでイナゴのよう。

黒い粒に染まっていく空に対して、彼は銃口を向けた。




☆@☆@☆@☆




 時に西暦2012年。

太陽に彗星らしき天体が衝突し、地球を包む程の大きな薄い未知の物質で構成された太陽フレアが直撃してから約100年。

人類は魂と肉体の分離に成功した。

それは、肉体を遺伝子レベルで波動領域に保存することで寿命以外でほぼ不死を実現できてしまった時代。

それは人の命が軽くなった時代。


 ―――はとっくに通り過ぎてしまった。

第三次世界大戦、第四次世界大戦と約50年以上に続く連続した戦火によって、肉体よりも精神が先に疲弊していき、人類は過去の平和に縋りながら細々と戦争の後遺症に目を瞑って、金で蓋をしたそんな世界の話。




☆@☆@☆@☆




 西暦2112年。

波動身体研究所という過去でいう病院に相当する施設にレイブンと呼ばれる彼がいる。

「それじゃあこのカプセルに入ってね。」

『あぁ……、頼む。』

 包帯を全身に巻いたミイラ男のような人物が担架から機械の手によって筒状のカプセルに入っていった。

そう、このミイラ男こそレイブンの彼である。


 プシューっとカプセルから煙が溢れ出て身体の再構築が完了した。

中から出てきたのは黒髪のミディアムロングヘアに銀色の瞳を持つ少女。

「波動値は正常。規定世界の定着も問題ないね。」

「ありがとう。マリィ……?。」

「ん?、どうした。」

 声に違和感に感じた少女?は喉元を触るがそれだけじゃないことに気づき始めた。

あまりにも低い目線。

細く軽い身体。

それに……。

「誰この美少女……。」

「ふふふ……。良いでしょ〜。」

「お前か!?。」

 鏡に写る幼い少女になってしまった自分の身体を見た彼はたいそう混乱していた。

(見た目は12と13の間ぐらい。小ぶりで成長途中な膨らみのある胸。寸胴のようで若干くびれた身体。割と曲線美な四肢。そしてなんと言っても顔が良くて可愛い。)

 思わず身体を動かして思い思いに確認する彼にマリィは暖かい目を向けていた。

「気に入ってくれて嬉しいよ。」

「ち、違っ……。これは!?。」

「良いのよ〜。」

 笑いながらマリィは彼に服を出した。

スポブラに、中に着るキャミ、そして明らかなセーラー服。

(これを着るのか……。)

 着替えとか大丈夫だろうかと思ってる彼にマリィは「着替えに関しては既に身体に動作をインストールしてるから大丈夫。」と言われて、困惑しながら着替えることに。

(思ってたよりスムーズに着替えれて怖い。)

 着替え終わった後、鏡を見た彼の目には白いラインの入った黒いセーラーブラウスに白いラインに白いベルトで止めた黒いミニスカート、白いスカーフに白いシュシュで黒髪を纏めたサイドテール。

(うむむ……。)

 これで良いのかという気持ちが残ったまま、新しいIDカードをマリィから渡された。

「なにこれ。」

「身体を買い戻したからそれに合わせたIDカード。」

「この【冬樹ユリナ】って誰ですか?。」

「あぁ、それは元々遺伝子データにあった名前を掘り起こしただけよ。」

「マジかぁ……。」

「だからこれから改めてよろしくね。ユリナちゃん。」

「あははぁ……。」

 彼ことレイブンことユリナの新しい人生がこの時に幕を開けた。

美少女JCの独立傭兵ソロとして宣伝するのはまだ先の話。

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