第5話 罪と罰




目を覚ます




どうやらまだ椅子に縛り付けられているようだ


目隠しをされ、手足を縛られて、

さらにタオルのような物も口に括り付けられている。


「ぅがっ!ふがっ…!!」

助けを呼ぼうとするが声が出せない。

(騙しやがったのか…俺を!)


拘束から逃れようと、足掻く。


だがきつく縛られていて動かない


(怜、あの野郎絶対に許さねぇ!絶対に殺してやる…)


(おそらく俺を切りつけたガキも必ず殺してやる!)



しばらくすると鉄の扉の開いた音が聞こえる


(やっと助けが来たか!?)


聞こえてきたのは俺を切りつけてきた少女の声だった


「お目覚めかね、能力者君。」


切りつけてきた少女を前にして怒りで力が溢れそうだ。


(さっきは唐突な出来事と痛みで発動出来なかったが、今度こそ痛みでショック死させてやる!)

能力を発動し、最大限の痛みを少女に与える



だが、少女の悲鳴は聞こえてこない。


すると少女が

「その程度の痛みで殺せると思っているのか」

「私も甘く見られたものだな」

と言う


(平然を装っているのか…?)


少女は変わらぬ態度で続ける

「そんな事はさておき、君に良いお知らせだ。」

「殺しも拷問もしない…だが……」



「君は『深淵街』へ売られる事になったよ」

と非情な事実を告げる



深淵街、名前は聞いたことある。


この都市のもっとも真ん中に近く

犯罪はもちろんマフィアやヤクザ、重要指名手配犯の住処になっていると言われているもっとも治安の悪い街。

入ったら最後、死ぬほうがましな未来が待っている


(ふざけんな、そんなとこに売られてたまるか!!)


状況を変えようと能力の出力を限界まで上げる。



だが声を上げるどころか動じた気配すら感じられない。



(なんだこいつ…イカれてやがるのか…!?)

(それとも能力が発動していない?)



「所詮は一般人か………」

少女は不良の後ろへ回り、肩を掴まれる


「用は済んだかな?ウチの従業員を傷つけたんだ、それ相応の『罰』を与えないとね」

少女はボソッと呟く


(仲間ってなんだ、怜のことか…?)

真実を知る事は無く、

少女は別れの言葉を投げかける。


「頑張ってね。能力者君。」

ひどく無機質に感じた、まるでこちらに興味すら持っていないような。



「むがっ!ふぅっ…!んぐっ…!!」

精一杯足掻くが状況は変わらない






「メイ。」






「ハイ、仰セノ通リニ」

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