第3話 能力者と無能力者

怪しげな外見とは裏腹に内装は普通だった。

どころか、少し小洒落た喫茶店のよう。


キョロキョロしていると、

「今は皆仕事に出ているよ。こっちだ、怜君」

Xは怜を奥の部屋へ手招く


「は、はい」

言われるがまま奥の部屋へ着いていく


その部屋はさっきまでの雰囲気とはうってかわって

事務所の様な質素な場所だった。


部屋にあるのは小さな机、

机を囲んで向かい合うように置かれたパイプ椅子

それと


(変な機械………)


口の大きく空いたモンスターを模した機械だった。



「さて、座りたまえ。まずは何に悩んでいるのかを私に話してみなさい。」

Xは向かいの椅子に腰掛け、怜も椅子に座る。


「ええっと、その…」

怜が渋っていると、


「大丈夫だ、私は決して笑ったり軽蔑したりしない。」

とXはまっすぐ怜を見据える


「わ、分かりました…」

そして怜は自分に何があったかを話し始める





始まりは高校1年の時だった。


僕が無能力者で臆病なのを良い事に


クラスの不良に

「ちょっとジュース買ってきて来んね?w」

と頼まれたのが始まりだった


僕が断らないのを良い事に

パシリはどんどん多くなっていき、周りの奴らも僕の事をパシる様になってきた


そしてしばらく経った頃

「なぁ、ちょっと皆に見せたい能力があるんだけどw」

その一言が地獄の始まりだった。


僕は取り押さえられ、

「よ〜し、動くなよ〜。動いたら上手くいかねえから」


次の瞬間


腹部に蹴られたような痛みが僕を襲った


「うぅっ…おぇっ……!」

その衝撃で僕は吐いた。


「うわっきったね〜!」

「ちょっと、こっちに飛ぶんだけど!」

「でも、凄いっしょ?w」

「俺、触れなくても痛みが与えられるんだぜw」

クラス中に笑い声が響く


そこから僕は能力を持ってる生徒たちのサンドバッグに成り下がった


やがてそれを聞きつけた上級生たちも集まってきて…


手を差し伸べてくれる人は誰もいなかった。


誰もが嗤い、見下す。


僕の心と体はあっと言う間にボロボロになった。



そして怜は袖を捲り、痣、火傷、切り傷を負った

腕をXに見せる


「……………」

それに対してXは無言だった。


「あっ、ご、ごめんなさい!変なの見せちゃって…」

怜は急いで袖をもとに戻す


「…………………」

だが未だにXは無言。




しばらく沈黙が続いた後、Xが口を開く


「君は、能力を手に入れたら何したい?」


「え、あ…えっと、その……」

突然の質問に戸惑う。


「ごめん、今のは聞き方が悪かったね。」

Xは続けて

「君にもし『力』があったら、君を虐めてきた奴らに復讐したいかい?」


そう問われ怜は考え込む




やがてしばらく考えた後

「………………したいです。」


「それが後に戻れない選択肢だとしても?」

とXはさらに問う


「………はい。」



その瞬間Xが机を叩き、立ち上がる

「よーし!そうと決まれば我々、」

「【何でも屋】シークレットロマンがその復讐、手伝おうじゃないか!」


「【何でも屋】?」

ここはリサイクルショップだったはず。

怜がそう聞くと、


「我々は実は裏稼業で何でも屋をやっていてね〜」

「最早そっちが本業だな!」

Xは胸に手を当て、得意げに言う


「明日ここへ来てくれないか?」


「は、はい……」

怜はXの勢いに圧倒され了承してしまう





混沌街入口にて


「それじゃあまたな〜!気を付けて帰るんだぞ〜!」

Xがブンブンと手を振っている


「はーい…」

それに対し手を振り返す

(元気な人だな…)




(復讐…か………)

帰路の途中、怜はある事に気づく。



身の内を話したからだろうか。

(苦しいのちょっと無くなったかも………)

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