シークレット・ロマンへようこそ

木野後藤

プロローグ

ようやくだ…




ようやくこの苦しみから解放される




日の登る、涼しげな中




建造中のビルの屋上からこの広大な都市を見下ろす




苦しいのに吹く風が心地良い




「これで終われる…」

誰に言う訳でもなく1人呟く




少年は柵に手をかけ、乗り越える




ビルの縁に少年は立つ




「さようなら、世界」




少年は柵の向こうにある靴を整え、封筒を置く




心地の良かった風が心地悪い風に変わる




「最後まで、気分悪い思いするのか…」




少年は涙を流し、体を脱力させる











その瞬間











「少年、ここで死ぬのか?」




少女の声が突如、背後から聞こえ




「!?」

即座に気を取り戻し、柵を掴む




「な、なんで今ここに人が…!?」

(見張りだけで中に作業中の人はいなかったはず!)




振り返るとそこには


黒スーツの上に白衣を羽織り、ゴーグルを着けた少女が居た。



白衣の少女は少年に言う

「私が先に飛び降りようとしていたのだがな。」

不満そうな表情を少女は浮かべ、


「死ぬのならちょっと面を貸したまえ、少年。」

と、少年に手を差し伸べる

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