第2話 sometime(2)

「何じゃねーよ。 夕方からずううっとメールしてんのに。 シカトぶっこいてんじゃねーよ、」



浩斗は苛立って電話の向こうのひなたに不満をぶつけた。



「だってさあ、今ダンスのレッスンから帰ってきたんだよ? もうクタクタ、」



ひなたは電話をしながらベッドに寝転がった。



「だから! なんで出先にケータイ持っていかねーんだよっ! おかしいじゃねーか!」



ひなたはせっかく携帯を持つようになっても全く持ち歩かないのでこのようにみんなから非難を浴びる。



「忘れちゃったの! それよりどうせ明日も会うんだからさー。 メールなんかしなくってもいいじゃん、」



その上、めんどくさがりやだった。





見た目は。



父親そっくりで近所でも評判の美少女。



ヒップホップダンスをしていて、運動神経もスタイルも抜群だった。



中学生になってから背もぐんぐんと伸び始めて、もう母親のゆうこを抜いてしまった。



そんなひなたなので



学校でもモテないわけがなく



常に男子生徒たちの注目の的だった。



上級生たちがわざわざひなたの教室に用もないのにのぞきに来たり



なんてことも日常だった。





しかし。



当の本人は全く『恋愛』には疎く



いまだに友達とワイワイやる方が楽しい。




幼なじみの浩斗から告白をされ



何となくお互い意識をしながらも、結局今までとそう変りないつきあいに留まっている。



同じクラスの二人は学校の行事でも一緒に行動することが多いし



小学校からの友達数人と遊びに行ったり



全く今までと変わっていない。



浩斗はそこが不満だった。



ひなたの気持ちをいまだに確かめたことはない。



彼女が今までどおりでいたいような空気を醸し出しているから。



それでもひなたが他の男子生徒に靡いているわけでもなさそうだったので



仕方なくこのままの状態でいるだけだった。



なんだかんだいっても



おれが一番ひなたに近い男だ



という確信があったから。





「で? 用事なに?」



ひなたは靴下を脱ぎながらぶっきらぼうに聞いた。



「用事は・・」



急に浩斗の口が重くなった。



「・・こんどの日曜。 部活休みなんだ。 水族館でも行かない?」



そして意を決したようにそう言った。



なんだかドキドキした。

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