第1116話 *ゴル* 兵団長
なんかとんでもないところまできてしまったな~。
おれは元々奴隷だ。物を運ぶことを永遠にやっていただけの男でしかなかった。
でも、国中にバデットが溢れ、おれらドワーフは放り出されてしまい、生きるために山の向こうにある国に逃げるしかなかった。
逃亡は酷いもんだったが、幸運にもマスターたちに拾ってもらえた。住む場所をもらえ、給金が出る仕事をさせてもらい、なぜか今は五十の兵士を指揮する立場になっていた。
……気が重くてたまらんよ……。
仲間が死んでいき、順番で纏め役になったが、兵団を指揮する隊長をやれとか無茶もいいところだ。
「そんな顔するな。お前はミリエル様に選ばれたんだぞ。名誉なことだろうが」
「名誉でこの胃の痛みは消えてくれんよ」
百人の命を預けられて名誉とか思えんよ。責任重大で今にもぶっ倒れそうだわ……。
「──ゴル。準備はいい?」
ミリエル様から通信が入った。
「心の準備がまだできてません」
正直に報告した。
「ふふ。じゃあ、十秒で用意しなさい。十五秒後に駆除開始よ。しっかり稼がないと他に取られちゃうわよ」
それだけ言って通信が切れてしまった。
「厳しいお方だ。ハァー」
ほんと、ミリエル様は容赦がない。おれなんかより兵団長に相応しいヤツはいるってのに。どんどん英雄に仕立てられているよ。
投げ出したいところだが、もう奴隷に戻るなんて嫌だ。家畜にも劣る生活に戻りたくない。ここで動かなければおれたちに未来はない。やるしかないのだ。
EARを握り締め、大地を埋め尽くすゴブリンの大軍を見た。
仲間の命を持つよりゴブリンの大軍を見ているほうがほっとする。
「これはおれたちドワーフの未来を賭けた戦いでもある! おれたちが活躍しなくてはこれから生まれてくる子がさらに苦労する! 一匹でも多くゴブリンを殺せ! 一匹たりとも通すな! おれたちの力を示すんだ! だが、死ぬことは許さない。生きて勝つ! マスターやミリエル様が許してもおれが許さない。やるぞ!」
なにか作戦があるわけじゃない。EARを持った三十人が並んで面を攻撃する。撃ち尽くしたら七十人が突撃する。この一帯のゴブリンはおれたちの獲物だ。
「撃て!」
引き金を引いて尽きるまで撃ち尽くした。
「突撃隊、突っ込めぇぇぇっ!」
七十人が雄叫びをあげるとながら突っ込んでいった。
「銃撃隊はルンを交換。突破してきたのは各自の判断で殺せ!」
魔力が充填するまでの間、それを補うために短めのショットガンを渡されている。それで戦線を守る。
「ゴル! 一部が突進しているぞ!」
「RPGで止めろ!」
二つのRPGー7を持たされた。爆発で我を返させるとしよう。
「突進はするな! 面で動け!」
まったく、指揮するのは大変だよ。
「突撃隊を下がらせろ! 銃撃隊、配置につけ! 次はしっかり狙ってたくさん殺せよ!」
まだ始まったばかり。気合いを入れろ、だ。
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