第1103話 *雷牙* 失敗
「豚の魔物ばっかりだな」
城は豚の魔物のテリトリーなのか、ゴブリンは一匹もいない。それに、あの二人がほとんど倒したから出会うのも少ない。死体ばかりだ。
「昔のおれなら豚の魔物に飛びついてるな」
美味そうな匂いをさせる豚の魔物。飛びついてないのはそれ以上の美味さを知ってしまったから。
「ドワーフたちなら食べるかな?」
おれたちニャーダ族も肉に忌避はない。人間を食ってようと肉は肉。構わず食うだろう。ドワーフもそこは似たような感じだった。
「まあ、今は掃除だ」
とりあえず上を目指してみた。
バカとなんとかは高いところが好きとタカトが言ってた。本当かな? と思ったら本当にいた。
あちらが動く前にスタングレネードをつかんで放り投げ、耳を塞いで物陰に隠れた。
城の上にいたのは魔法使いみたいな格好をしたドワーフたちだった。
おれは一切魔法が使えず、魔法を感知する力もない。魔法使いと戦うなら先手必勝。魔法使いがいる空間には入らない。姿を見せずに殺れ。一切の同情もせず、あとのことなど考えなくていい。殲滅してからあとのことを考えたらいい、と教わった。
耳を塞いでもキーンとするが、意識ははっきりとしている。胸につけている手榴弾を両二つ両手でつかんで物陰から放り投げた。
気配からまだ立ち直ってはいない。そこに二つの手榴弾が爆発する。
机や棚みたいなのがあったから生き残っているのもいるはず。物陰から飛び出し、生き残っている者を見つけ出す。
──動いているのは四人。まずは逃げようするヤツにブーメランを投げつけた。
女神製だけあって高性能。首を跳ねたらおれの元に戻ってきてくれる。でも、その前になにかをつかもうとするヤツに投げナイフを食らわせてやった。
魔法的トラップが発動しないのなら仕掛けられてないってことか、不発に終わったか。どうなのかわからないので机や棚を蹴り飛ばしておく。発動させるものが近くにあったら困るからだ。
ひととおり終わったら虫の息のヤツらに目を向けた──ら、一人いなくなっていた。逃げられた!?
それでも残りを確実に殺す。後ろから刺されたら困るからな。
消えたヤツのところに向かうと、滑り台みたいな通路があった。
「──タカト」
プランデットをかけてタカトに向かって叫んだ。
「一人逃した! たぶん、城の下に向かってるかも! なんかする気だ!」
うっすらと憎々しげな目をしていたのを覚えている。あれはまだなにかするつもりだ。
「わかった。タダオンたちと向かう。お前も追え。殺せるなら殺して構わない」
「了ー解」
これはおれの失敗だ。必ずおれが殺してやる。
滑り台みたいな通路に飛び込んだ。
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