ダメ女神からゴブリンを駆除しろと命令されて異世界に転移させられたアラサーなオレ、がんばって生きていく! 3
タカハシあん
ちょっとした逸話
これは『ダメ女神からゴブリンを駆除しろと命令されて異世界に転移させられたアラサーなオレ、がんばって生きていく! 3』です
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わたしが妊娠するとはね。
いい男がいたら捕まえ、何度も夜を過ごしてきた。そんなわたしがこんな幸福を得られるなんて夢にも思わなかった。
「わたしはいつからタカトに魅了されていたのかしらね?」
大きくなりつつあるお腹に触れた。
最初は情けない男だと思った。女を知らないうぶな男。でも、タカトはそんなことなかった。一切、女を受け入れず、どんな女にも求めたりしなかった。それは今もだ。
「どうして? あなたならどんな女も選び放題じゃない」
どうしてもわからず訊いてしまった。
「臭い女に魅力は感じないからな~」
だった。
はぁ? 臭い?
「食生活か風呂に入らないからか、この世界の者は臭いんだよな。ラダリオンも最初はとんでもなくて、その臭いが消えるまで数日かかったよ」
「……わたしはどうだった……?」
初めて会ったときのことを思い出しながら尋ねてみた。
「コラウス自体がとんでもない悪臭だったからな、個人が臭いとかわからなかったよ」
視線をズラしたところをみると、臭かったんだと思う。今の生活を考えたら確かにいい匂いなどしなかっただろう……。
「今のシエイラはいい匂いだよ。幸せになる匂いだ」
わたしを抱き締めるタカト。今、汗をかいているんだから止めてよ!
って、わたしもタカトに染まったものよね。臭いなんてそう気にもしなかったのに、毎日の入浴が止められない。毎日着替えないと気持ち悪く思うようになってしまったのだからね……。
「匂いが好きなの?」
「匂いに敏感なだけさ。臭いと精神的に参るし、落ち着かない。ホームがなかったらオレは生き残れなかっただろうよ」
ホームは常に掃除されており、わたしでもわかるくらい空気が清んである。常に空気清浄機が動いており、ライガの毛すら落ちてない。タカトって、案外綺麗好きで、無意識にコロコロをかけていたわ。
「異世界人って皆綺麗好きなの?」
「うーん。全員が全員ってわけじゃないが、いきなりこの世界に連れてこられたら大半は絶望するよ。シエイラだって今の生活を取り上げられたら歓喜するか?」
「……しない。絶望するかも……」
今の生活を捨てるとか考えられない。館では貴族以上の生活を送れているのよ、これを捨てるなんて死んでも嫌だわ。
「駆除員はその絶望を知って心が折れる。たった一人で受け止めるしかない。それを乗り越えてやっと手に入れた安らぎだ。絶対に失いたくない」
また強く抱き締められた。
「それはわたしもよ。この幸せを失いたくない。あなたを失いたくない」
タカトはわたしが初めて魅力された男。絶対に失ったりはしない。わたしが守るわ。
「……ありがとう……」
ありがとうはわたしのほうだ。こんな幸せをわたしに与えてくれたんだからね……。
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