ゲームバグで見知らぬ世界に

@katuniro

第1話ゲームから迷い込む



俺は、どこにでもいるゲーム好きな男だ。


最近は、中国ファンタジー風な『幻影記』にハマっている。


オンラインRPGをやったことがあるなら・・・

誰もが知っているハズだ。



キャラクターを作って始まりの街に降り立つ。

ワクワクしながら戦う。


弱い相手を倒してレベルを上げる。

分かっているのに楽しい。



レベルが上がらない。

次の街へ行くために挑戦するしかない。

誰もが強過ぎて挫折する相手は、キョンシーだ。



そのキョンシーが大きくジャンプして目の前に・・・


そしてキョンシーの両手が突きだされる。

その突きに合わせて、腕を肩にかつぎながら投げる。

いわゆる背負い投げだ。


驚愕するキョンシーの頭が地面に当たる瞬間に、頭に力強い蹴りが入った。


これで奴のHPは、残り2割だ。


倒れたキョンシーが起きあがろうとした。


後ろにさがりながら気力をためる。

最後の一撃に気力を込めて波動拳を発動。


「波動拳」


青白いかたまりがうねりながら飛んで見事に命中。

中ボスキョンシーを倒した。


俺のHPも1割で危なかった。


「やり切ったぞ!!」





「ビビビビ・・・・・・」


「何が起きた」


3Dメガネを装着してのゲームを楽しんでいたのに・・・え!こんなバグ表示が・・・


あれ!何かがおかしい・・・急に暗転して何も見えないぞ。


あ!意識、あああ、意識失ってゆく。







「え!ここは何処だ!」


木漏れ日が・・・


起き上がった俺は、周りを見渡す。


「ここって森の中なのか・・・」


ゲームにしては、周りがリアル過ぎる映像だぞ。

あれ!ログアウト表示が無いぞ。


慌てて3Dメガネに手を・・・え!あるハズの3Dメガネがない。

それに顔を触った感触がシッカリと残ってる。


「嘘だーー」


知らない世界に迷い込んだぞ。

これってバグが引き起こしたに違いない。

顔をつねっても痛いだけだ。

目が覚めることもない。


何だか背筋が凍る思いが・・・なので俺のステータスを見る。



綾波信あやなみしん


HP 50

MP 30


幻影記から来た者





「ギャーー」


背後から獣の鳴く叫びが・・・

振返った瞬間に見たものは、老人だ。


それも老人は大剣を振りかざして赤い大熊を斬った。


大熊の右肩から左下へ斬られて内臓がボタボタと落ちる。

立っていた大熊は崩れるように倒れた。


熊の目がカッと見開いて死んでるのは確実だ。



「そこの小僧!ここに来なさい」


なんて気迫だ。

あれ!なんで勝手に歩いているんだ。


「止まれ!歩くな」



「お前に・・・天武神魂てんぶしんこんを授ける」


え!体のあっちこっちを指先で突かれる。


「痛い!何をした!」


激痛と緩和が交互に襲ってくるぞ。


最後に魂が入魂されたぞ。


そして1時間が経過・・・


やっと激痛もなくなった。

そして老人を見る。


「これで我が500年の人生に悔いはない・・・・・・」


え!!!老人が粉々になって消えたぞ。

マジか・・・



ゲームのステータスを呼び出して見る。




綾波信あやなみしん


HP1000

MP 800


幻影記から来た者

天武神魂を受け継ぐ者




幻影記は、中国をモデルにしたファンタジー風で・・・

拳に気力を込めて戦う格闘の世界。


そんなゲーム世界でトップを走り続けていたのに・・・なんで。



それに老人も、ここの世界のことを何も語らないまま・・・逝ってしまった。

責任感ってものがないのか・・・


ああ、どうしたらいいんだ。


残ったのは、大きな剣だ。


それも刃部分が120センチで、持つところ30センチ。

だから全体長さは、150センチの大剣だ。

それに幅が20センチで厚みも半端ないぞ・・・これならドラゴンでも殺せる。


信じられない大きな剣だ。


そんな重そうな剣が持てるのか・・・あ!持てた・・・

なんか持った感じもシックリする。


記憶に残るイメージにしたがって剣を振った。


え!剣から何かが飛び出して・・・木をなぎ倒してるぞ。


斬られて倒れた数は、1、2、3、4、5本だ。

斬れ残った1本には、惨い傷が残っている。


ああ、これが気魂きこんのなせる技らしい。


あれ!背後に弱弱しい気配が・・・



なんと赤い大熊の体内から熊の赤ちゃんが・・・

すでに6匹は死に絶えていて、残った赤ちゃんもひどい怪我だ。


天武神魂の治療方法が脳裏に浮かび出す。


手に気魂を集めて赤ちゃんへ注入・・・


背中の怪我がふさがり・・・え!未熟児の赤ちゃんが・・・

全長10センチだったのに40センチまで急激に成長してるぞ。


そして足元にすり寄って「グアー、グアー」と鳴いてる。




仕方ない・・・俺が育てるか・・・


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る