第14話 自由度が高いシステム
「これで準備が整ったな」
「アイツの言う東の村へ行く準備は整ったってこと? その割には厳重だね」
俺はその問いにワザとらしく指を振る。
「オープンワールドゲームは、決められたストーリー展開じゃなく、好きに自分で道を切り開いてくんだよ」
「また訳の分からないことを……」
ジト目で俺を見つめる目は随分と疑り深い。
「今から妹さんを助けてくる」
「な、なにをいってるの!」
予想外の答えだったのか、クロバナさんの表情には焦りが見えた。
「根本から解決するのが良いだろ?」
「何処にいるか分かってる? 城の療養施設にはいるけど、そこは研究機関も兼ねてるから場所は隠されてる。私だって会いに行けないし、聖剣使いもいる騎士団が護ってるはず」
「場所についてはそろそろ餌に引っかかる頃だと思うんだよね」
俺はドローンを召喚して、偵察ドローンが見ているリアルタイム映像を空中に映し出す。
理屈は分からないが、ゲーム内で再現できることは、この異世界でも再現できる。クロバナさんに至っては何を見せられているのか意味が分からないようだった。
「あー……占い師の水晶的な……」
あ、なんか自分なりに理解してるのが凄い。
流石、魔法については一級品のセンスを持っている。
「手紙を作ってドローンでヴァイスの家に置いといたのさ、研究所で何をしてるのか知ってるぞって書いてな」
「何をしてるか?」
映像に写っているのはヴァイスだ、慌ただしく自分の騎士たちに指示を出している様子が映し出されている。
「嘘を仕掛けたんだよ。何もしてないかもしれないけど、あの性格なら職権乱用の一つか二つあるだろう」
クロバナさんは納得したようで、再び映像に視線を移動する。
「ここは――地下水路」
「妹さんを改善できるかもって話してたから、半魔族化した人物を療養か研究してると思ったんだ。もし療養や研究なら水は大量に必要なはずだから、水辺、更に城とのアクセスが良く、隠れている場所――つまり水路かなって」
「無職レベル1の中年にしては冴えてるねえ」
「護りの騎士たちについては、おそらく大丈夫。会わなければ、どうということはない」
俺は腰のライトブレードを引き抜いて、宙を斬ってみるとブォンと耳障りの良い音が響いた。
それに合わせるように、金属音が重なる。
「なんだ?」
偵察ドローンからの映像が途切れていた。
目を離した最後の瞬間を急いで再生する。
するとヴァイスたちが走り去った後、ヴァイスと同じ騎士団の鎧に身を包んだ人物が、辺りを見渡しながら悠々と歩いてくる。頭部は豪華な羽根つき兜を身に付けているので表情は窺えないが、スレンダーな体つきから女性だと推測できる。
彼女は本来、認知できないであろう偵察用ドローンと視線が交差し、反射的に腰に手を伸ばして、――映像が途切れた。
「まさか、斬られたってのか」
偵察用ドローンはゲーム内でも、高レベルの人物には見破られる。つまりあの人物はそれなりの実力者ということになる。
「まさか、あいつも出てくるとはね」
両手に黒い革手袋をはめて、戦闘準備を整えているクロバナさんが苦々しげに呟いた。
「あの羽根つき兜は騎士団長――抱擁のアテナ」
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🌸次回:第15話
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