無職スキル無し中年モブが追放。けど俺だけ別ゲー仕様なので実績解除を楽しみます。~無双と拠点開発をしてたら、魔女と子どもに懐かれ知らぬ間に英雄扱いされてたみたい~

ひなの ねね

プロローグ ルート

第1話 リアルはモブ、異世界ではオープンワールドのように

「貴様は召喚英雄パーティーには不要だな、職業適性もない無職レベル1の中年よ」


 厳かな王の声が召喚の間に響く。


 昔は相当な武人だったのだろう。

 顔に深いしわが刻まれ、左目は上から下に向かって深い傷が刻まれている。


「しかも【召喚英雄スキル】すら持ち得ぬとは――なるほど、だから、大人になっても何と鍛錬が足らぬ表情と体躯(たいく)か――」


 深いため息をつく。

 一緒に召喚された高校生の四人組は、優秀な【召喚英雄スキル】と適正職業がステータスに表示された為、【召喚英雄専用武器】を手渡されていた。


「これでは魔力を独占しよとする魔族たちへ、太刀打ちは出来んな」

 

 王は嘲笑うように……言った。

 高校生四人組も、俺をチラ見してはひそひそと苦笑している。

 

 召喚を執り行った魔法使いたちは俺のステータスに畏怖を覚えたようだ。


『すべてステータス1なんて存在するのか――?』

『今までどうやって生きてきたんだ』

『ひい、無職のオッサンが召喚されてしまったわ!』

『近寄ってはならぬ、奴は運命から見放された者じゃ……』


「――騎士団長、副騎士団長」

「はあい」「はっ」


 豪華な鎧に身を包んだ偉そうな騎士団長と副騎士団長が背筋を伸ばす。

 王は静かに息を吸い、空間を揺らす低音で叫んだ。


「その者――ユウギ デンジを追放せよ!!」



★ ★ ★


 ――1時間後。


『ようこそ、王都セブンスへ』

※実績が解除されました。


「おー、実績が解除された」

 耳慣れた解除音が俺のすさんだ心を癒してくれる。

 しかも実績タイトルが視界の右上に浮かんで表示されている。

 なんと目立つことか……。


 俺はユウギ デンジ、召喚前はブラック企業の会社員(30代)だ。

 今は城下町の路肩に座りながら、ステータス画面を眺めている無職の中年さ。


「早々に投げ捨てられてしまった」


 あまりの無慈悲さに1時間ほど放心したのは仕方ないよな。


「本当なら家でゆっくりゲームしてるはずなのになぁ」


 心待ちにしてた新作ゲーム、「ナイトブレードライダー4099 2」をやりこんでるはずが――秋葉原のゲームショップを出たとたん、異世界転移に巻き込まれた。


「異世界でも長期的なキャリア形成の観点から、おっさんは不要ってことかね。何も城下町に投げ捨てなくてもな……」

 

 ステータスは全て1なので、レベル1の生まれたての小鹿よりも貧弱だろう。


 レベルアップに必要な経験値に至っては【∞】(無限)マークなので、一生レベル1なのも笑える。


「他に召喚された高校生の中に、おっさんが混ざるのも忍びないし、低ステータスの俺を無駄死にさせないように追放してくれた――と解釈しよう!」


 俺の良いところは切り替えが早く前向きなことだ。

 ――と、ステータス画面にバグってるボタンがあるんだけど。


 ボタンの形はしているが、文字は読めず、砂嵐のような線がいくつも入り、色も大昔のブラウン管テレビが不調時のように、カラフルな色合いを放っている。


 「お、押してみるか……?」


 恐る恐るボタンに触れると、宙に浮かんでいるステータス画面が、突然クルッと回転し、親の顔よりも見た「ナイトブレードライダー4099」のメニュー画面へと切り替わった。


「ん? んんん?」


 ところどころ違うのは「2作目」仕様なのだろう。

 情報収集に余念がない俺は詳しいのだ。


「えーっと、パーク、装備、ステータス、乗り物――おお、新要素のカンパニーとハウジング、育成もある。グレーアウトしてるけど」


 2作目からの新要素は、後々使用できるってことなのかな。


「おおおお、やっぱりあった実績解除!」


 1作目は100%になるほどやりこんだのだ、2作目も100%になるほどやりこもうと心に決めていたのだが――。


「異世界に来ちゃったしな……」


 新作ゲームを発売日当日にプレイできない悲しみが襲ってきたが、ふと視界の右上に、まだ残っている実績解除アナウンスに気が付いた。


「もしかして、異世界でも実績解除できる……かも?」


 、が表示されるってことは、おそらく可能だ。

 そう思ったとたん、おなかの下あたりから、だんだん気合が湧き出てくる。


「よおし、ならやってやろうじゃねえか」


 英雄召喚として王都セブンスに召喚されたが、不要と捨てられ、楽しみだった新作ゲームもできないおっさんが――。


「異世界の実績を全て解除してやるよ!!」


 そうすりゃ、城下町に投げ捨てられた俺が、異世界に召喚された意味もあるかもしれない。


 オープンワールドの仕様が適応されてるんだ、ゲームの彼らみたいに自由気ままに過ごそうじゃないか。


「手始めに初期ポイントで必須パークだけは取得しとくか」


 俺はパーク画面から『ガラクタ分解1』を取得して、近くに捨てられいる木材の切れ端を視界に捉える。


 すると勝手に俺の無限アイテムボックスの中に素材:木材として放り込まれた。


 次にゴミ捨て場に捨てられている真っ二つに折れた剣を視界にとらえると、今度はニューアイアンインゴットとして収納される。


「すごい……分解するものによっては、ナイトブレードライダー4099に登場した、近未来っぽい素材になって収納されるのか」


 じんわりと手ごたえを感じて、久しぶりに生きた心地が身体を駆け巡る。


「まずは町中の素材を集めて、素材屋を見つけて売買するところから始めるか!」





――――――――――――――――――――――

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