第10話 時代のうねり

 栄枯盛衰、盛者必衰。いつの時代、いついかなる時節にあって。隆盛を極めたのちは没落するだけだと、千年前から相場は決まっている。


 つまり何が言いたいのかというと、まちにまった禁止改定の発表日である。


 ときはまさにサカズキ一強時代。

 やつのせいで8割方のリーダーが息をしておらず、プレイヤーの多くが禁止を望んでいた。


 過去のモビーディック号やカバジなどの例からもわかる通り、運営はしっかりと出過ぎた杭を打つ。


 一時代の終わりを見届けようと、僕たちはカドショにて生放送閲覧会を開いていた。

 皆が固唾を飲んで見守るなか、ついに本営発表がなされる。


 一つ目はやはり、『青黒サカズキ』の全面使用禁止。

 皆はおおいに納得したが、黒色師匠だけは少しもの悲し気な表情だった。


 禁止カードはサカズキだけでなかった。


「「うわ!!」」


 ふたつの叫び声が上がる。


 一つはパパさんの息子くん。

 目下急成長を遂げており、高校生ながら実力は四天王を超える。直近のフラシも優勝したばかりの育ち盛り。おそらく地元最強である。


 彼は黒単モリア使いであり、サカズキ禁止に関しては静観の姿勢を貫いていた。


『大噴火の禁止』


 コストを下げながらワンドロー。実質手札消費なしで強力な効果を発揮する、黒色リーダーの汎用カードだ。


 もちろんサカズキにも入っていたが、今回の禁止制限により、モリアまでも弱体化してしまったのだ。


 彼は頭を抱え、今後のあり方について思案していた。


 もう一つの声は僕だ。


「『排撃リジェクト』の禁止ぃ!?」


 ヤマト使いはただでさえ今回の禁止改定に不満を覚えていた。

 なにせヤマトは、サカズキに有利を取れる数少ないリーダーであり。


 奴が押さえ込んでくれていたアグロや要塞型、エネルなどといった不利対面が、今後増えてくるだろうと予想していたから。


 そこにきて、ヤマト御用達の貴重なイベントカードをも奪われたわけである泣。


 禁止にされる理由はわかる。

 ラス盾をたったの4コストでぶっ飛ばしつつ、相手の5コスト以下を除去する動きも取れる。


 一枚のカードで二枚分の働きをするのは正直ズルいと思う。

 シュラというサーチカードで山札から引っ張って来られるのも強い。


 でも、でもさぁ。

 ヤマトってば、tier 3リーダーじゃん!!


「なしてそこまでされんといけん!?」


 当時はtier上位のカタクリやエネルにもリジェクトが採用されていた。


 完全にその煽りを受けた形だ。


「リジェクトないと、どーやってエネルに勝つねん!!」


 皆が大満足の閲覧会にあって、僕の慟哭どうこくだけが虚しくこだましていた。


 おそらく今回の禁止改定で、サカズキの次にダメージを負ったのはヤマトである。


 ヤマトに吹く強い向かい風。これより過酷な生存競争がはじまる。


 次回『貧乏人、無理してワンカートンを買ってしまう』へ続く。

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