第157話
けっきょく二次会にも参加することになったと希和からメールがあったのは、式が終わった直後のことだった。
『ごめんね、久し振りに会う連中が多くて断れなかった。終わったらまた連絡するよ』
おめでたい席だし、盛り上がってそういう流れになるのは当然のこと。
だから再び連絡がきたとしても、きっと今日会う約束はなくなるんだろうなと思った。
会えないのは少し残念ではあるけれど、いつも仕事ばかりの希和が、久し振りにこうして懐かしい友人たちと羽を伸ばせられているかと思うと嬉しかった。
大安の土曜日。
雲ひとつない美しい青空に、新郎新婦には嬉しい晴天だろうなと思った。
せっかくの良いお天気も、私はどこかへ出掛けることもなく1日部屋でのんびりと過ごした。
午前中に洗濯や掃除を済ませ、午後は音楽を聴きながら本を読んだりと。
心は穏やかで、満たされていた。
希和からメールではなく電話がかかってきたのは、22時を少し回ったころだった。
「もしもし、・・・・希和?」
少し詰まりながらも名前を呼ぶも、ざわざわと雑音が聞こえてくるだけで、肝心の愛しい人の声が届かない。
「もしもし?」
もう一度こちらから声を発信すると、
「・・・・連絡、遅くなってごめん」
いつもとは違う、少し掠れたような声が聞こえた。
「ううん、それは全然良いんだけど。えっと、今どこ?」
「二次会の店から出て、タクシー待ちしてる。三次会にも連れて行かれそうになったけど、流石に俺は明日仕事だからやばいと思って逃げてきたんだ」
少し笑いを含んだその声に、
「そっか。でも久し振りに友達にも会えて、楽しかったんだね」
楽しくて、きっとお酒もたくさん飲んで、だから先ほど感じた違和感は、珍しく少しだけ酔っているからなのだと理解した。
「そうだね。うん、楽しかった。・・・・楽しかったよ」
「ねぇ大丈夫?今1人なんだよね?ちゃんとタクシー乗れる?」
「乗れるよ。そこまで酔ってないから」
希和ははっきりとそう言うけれど、やっぱりいつもとは違う希和の様子に、私の不安は消えなかった。
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