両片想いの親友達をくっつけようとしてたら、相手の親友である金髪ダウナーギャルの彼女ができた
あおぞら@書籍9月3日発売
第1話 親友同士
「———あ、あの、詩織……さん、夏休みにここ行ってみない……かな?」
そう言って、俺がたまたまネットの抽選で当てて横流しした某有名遊園地のチケットを渡すのは———どんな寝起きの機嫌が悪い奴でもお目々を見開いて覚醒するレベルの超絶イケメン。
彼の名前は、
名前すら格好いい超絶美青年の海人だが……今はそんな格好いい顔を強張らせ、敬語のようで敬語じゃない良く分からない言葉を使っているのには理由があった。
「……ディズ◯ーランド、ですか……?」
何を隠そう———彼女のせいある。
彼女の名前は、
腰まで伸びた美しい黒曜石のような漆黒の艷やかな髪と、思わず吸い込まれそうな漆黒の瞳を持ったお淑やかさで溢れている———誰もが思わず5度見するくらいの超絶美少女。
そして、海人の想い人でもある。
「う、うん、たまたま当たってね。折角だしどうかなーって。ほら、この前電車にあるポスターをジッと見てたでしょ?」
おっと、それは初耳ですよ。
やはりイケメンは行動すらもイケメンと言うことか、羨ましい。
パチパチと目をしばだたかせる詩織へと優しげな笑みを浮かべて、しれっとイケメン発言をする海人。
これには、詩織も満更でもなさそうにはにかんだ。
「そう、ですね……それじゃあ、行きましょうか……一緒に」
「っ! う、うん! ありがとう! 詳しい話はまた今度するね!」
「ふふっ、何で海人君がお礼を言うのですか。お礼を言うのは私の方ですよ?」
「あ……確かにね」
あぁ、甘酸っぱい!
とっとと付き合っちゃえよっ!
俺は心の中でこのじれじれ具合に悶えながらも……開けばベラベラと喋ってしまうこの口で雰囲気を壊さないように我慢する。
それが海人の親友にして、両片思いである2人の恋模様を間近で観察するこの俺———
そして俺と同じ立場の奴がもう1人。
「へー、楽しそうじゃない。詩織、道に迷っちゃ駄目よ?」
「ゆ、柚月ちゃんっ! もう私は昔みたいな子供じゃないんですよ?」
「……たまに移動教室で逆に行く人はどこの誰だっけ?」
「うっ……わ、私です……」
あの超絶美少女たる詩織と海人以上に仲を深め、こんなコントまでしてしまう詩織の親友にして、俺と共に2人の恋模様を間近で観察する美少女の名前は———
詩織よりは流石に劣るものの、十分美少女と呼べる……見た目こそ詩織と真反対の金髪ギャルでありながら、詩織の保護者であるしっかり者だ。
この4人が———所謂イツメンである。
おっと、俺だけ見劣りするかもって思ったろ?
残念でした、俺もちゃんと顔は整ってるんですよね、顔は。
ま、モテないけどね。
「———ということで『第17回2人をくっつけようの会』を始めたいと思う! イェーイパチパチ! どんどんパフパフー!」
無事2人がデートに行くことが決まった日の放課後。
帰り道からは少し逸れた場所にある隠れた名店のカフェの一角にて、俺はテンションマックスで声を上げた。
そんな俺の対面に座った柚月は、おーっとおざなりに手をパチパチさせる。
「おいそこ、テンション低いぞ」
「逆にアンタは何でそんなにテンションが高いのよ。1ヶ月も先のことなのに」
呆れた様な視線と共にため息を吐く柚月に、俺はグッと拳を握りしめて力説する。
「2人が1日デートするんだぞ! あの放課後デートですら俺達がいないとしない奥手すぎる2人が! てか俺がどんだけあのチケットを当てるために要らない物を買ったと思ってんだ。意地張って頑張ってたら……普通に買った方が安くなったわ!」
だって合計で数万掛かったもん。
普通に買ってたら何人分買えたんだろうね。
そんな俺の話を聞いた柚月は、ポツリと一言。
「哀れね」
「俺の労力を、たった3文字で返される気持ちにもなってみ?」
「生粋の馬鹿ね」
「6文字になって殺傷力が上がってる……!」
何て茶番はさて置き……本題に移ろう。
「さて、1ヶ月後に2人が例の場所に行くわけだが……」
「テンションどうなってるのよ」
「切り替えが早いのが俺の取り柄だからね」
俺がむんっと胸を張って言えば、柚月も納得した様子で頷いた。
「ああ、馬鹿だものね」
「は? 馬鹿じゃないが?」
「あ、ごめん。馬鹿ではないわね」
「そうだぞ。俺は決して馬鹿じゃ———」
「アホだったわね」
「どっちも大して変わらんくね!?」
さっきから言葉の切れ味が凄まじいんだけど。
こいつ、毒舌にもほどがあるくね?
「それでアンタが言いたいことって、2人をストーカー……もとい尾行するって話かしら?」
「言い直しても変わってないなぁ。ま、言い方悪くしたらそうなんだけど」
沢山言葉を知ってるくせに敢えて悪い言葉を選ぶ辺り、この美少女は恐ろしい。
敵には絶対回したくないな……何て思いつつ、俺はニヤッと笑みを浮かべると。
「———これ、なんでしょう?」
「っ!?」
懐から、海人に上げた物とは別の、例のテーマパークか遊園地か言い方は知らない所のチケットを2枚取り出す。
これには流石の柚月も驚いた様で、スマホを触る手を止めて目を見開いた。
「あ、アンタ……どうやってそれを……」
「買った」
「は? え、買った?」
端的な俺の言葉に戸惑いの様子を見せる柚月。
「そう、買ったんだよ、普通にな。だって2人を見守るのが俺らの役目じゃん」
「……私の分は自分で払うわ。それ、一体何円したのよ」
頭が痛いとばかりに額を押さえる柚月に、俺は更に笑みを深める。
「1万くらい」
「高っ。ちょっと待ってなさ———」
「だがしかぁーし! 今なら、とあることをすればこれをタダでやろう」
彼女の言葉を遮って声を上げた俺は、通学鞄から日焼け止めやら香水やらネックレスやら……男の俺が沢山あっても要らないモノを取り出して机に並べていく。
「アンタこれ……」
「そう、これは2人のチケットを当てるために買った数々の商品さん達だ。これを引き取ってくれるならタダであげちゃう」
これ、家にあったらかさばるし、仮に親に見られたら『アンタどんだけ無駄遣いしたのよ!!』ってブチギレられること間違いなしである。
よって、手放すに限る。
そんな意図であげると言ったのだが……柚月は何故かキッと俺を睨んで言った。
「…………貰う。でも、チケット代は払うから」
「え、何で? 別に良いのに」
「いいから貰っておきなさい!」
「ハイッイエスマム!」
これが超絶イケメンの海人の親友である俺と、超絶美少女の詩織の親友である柚月2人だけの裏の日常である。
あー、1か月後の夏休みが楽しみだなぁ。
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