第11話 おでかけ その2
大輔は、梨香の背中を見送りながら、少し考え込んだ。「なんだったんだ、今のは…」
梨香は、もう一回振り向いて手を振って帰って行った。ちょっと待っていると葵と合流し、駅の方へ2人で向かった。
「そう言えばさ。梨香さんが、明日買い物一緒にどうですか?って誘ってきたよ?」
「ん?梨香ちゃんが?なんで教室で誘わなかったんだろう?」
「あぁ。それは、さっき下駄箱で葵を待っていた時にたまたま会ってさ。今から葵と駅へ買い物しに行くって話をしたんだよ。その時に、今日一緒について行ってもいいですか?って聞かれたんだ」
「うん。それで?」
「それで、今日はさ、梨香さんの家に着ていく服を買いに行くから、そんなこと言えないじゃん。だから、父親のものを揃えるために行くからって嘘ついて断ったの。」
「ふむふむ。確かに梨香ちゃんがきちゃうと困るから仕方がないけど、よくそんなに上手く断れたね。」
「確かにな。まあコミュ力が上がってきた証拠?みたいな感じじゃない。」
「ふははは。何言っているの?おにい。」
「まあ、というわけでさ、明日3人で行こうっていう話になっているわけ。明日行けそう?行けるなら葵から梨香さんに言っておいて。僕は大丈夫だから。」
「ん?3人? ってことは、おにいも一緒にってこと?」
「そうそう。なんか3人で一緒に行きたいみたい。別に梨香さんと葵とで行った方楽しいと思うんだけど、さっきみたいに言われちゃ流石にね。」
「ふ〜ん。了解。じゃあ、明日も下駄箱集合ね。よろしくね」
「了解。同じ場所で待っているよ」
駅前の服屋に到着し、葵と一緒に服選びをする。
駅前の服屋に到着し、葵と一緒に服を選び始めた。葵はさっそく服を手に取ると、大輔の前で広げてみせた。
「これなんかどう?おにい、いつもの黒シャツじゃなくて、たまには色のあるやつを着た方が良いよ。」
「いやいや、黒は無難で良いじゃん。なんで色が必要なんだよ。」
「ほら、おにいはいつも『無難』とか言うけど、ちょっと冒険してみなよ!これとか絶対似合うって。」
葵が手に取ったのは、淡いブルーのシャツ。大輔は少し戸惑いながらも、試着室に押し込まれた。
「…似合ってる?」
「うん、ばっちり!おにい、すごくいいよ!日曜日はこのシャツに決定!」
「決定って…おい、まだ決めてないぞ!」
「いやいや、これはもう運命だから!」
大輔は苦笑しながらも、鏡に映る自分をちらりと見た。普段とは少し違う自分がそこにいて、思わず頷いた。
「…まあ、悪くないかもな。」
「でしょ!日曜日はこのシャツね!」
大輔は苦笑しながらも、少し新しい自分を感じ始めていた。
服を選んでいると浅見さんのグループ3人で買い物をしているところに遭遇した。
ちょっと葵がトイレに行くというので、服をぼーっと見ていたら、浅見さんに声をかけられた。
「城山君。こんにちは。彼女と服選びかな?」
「え??何を言っているんだよ。浅見さん。自慢じゃないけど、人生で一度もお付き合いなんてした事ないよ。妹だよ、い・も・う・と。」
「へぇ〜、あの女の子は妹さんだったんだね。でも、妹に頼られるお兄ちゃんっていいじゃない?」
「そう?なんかさ、僕の服選びが絶望的らしくてさ、私が選ぶって言われて連れてこられたんだよ。」
「ふふふ、絶望的って言われちゃったのね。じゃあ、妹さんに感謝しないとね〜。」
「まぁ、そんな感じ。で、あと少しで戻ってくるから、紹介するよ。」
「えっ?紹介してくれるの?」
「うん、せっかくだからね。あ、浅見さんは良い服見つかった?」
「ううん、今日は買い物に来たわけじゃないんだ。友達とウィンドショッピングってやつかな。」
「なるほどね、女の子はこういう付き合いもあるってことか。」
「お待たせ。おにい、その人は?」
なんか、すごい綺麗な人なんだけど…なんでおにいと話してるの?
「あぁ、葵。この人は、浅見さん。一緒のクラスで、数学の教科係やってるんだよ。」
「葵さん、こんにちは。私は浅見結衣。城山君と同じクラスです。よろしくね。」
「浅見先輩。兄は人と話すのがちょっと苦手なところがありますが、これからも仲良くしてもらっても良いでしょうか?」
「ふふ、任されました。これからもよろしくね。」
結衣が微笑んで挨拶を終えると、彼女は友達のところへ戻っていった。
すると、葵がすぐに大輔に詰め寄る。
「ちょっと、おにい、あんな美人な人と話してるなんて聞いてないんだけど!」
「え?美人って関係ある?」
「関係あるでしょ!家でさ、ずっと話してた浅見先輩ってあの人?」
「そうだよ。クラスで唯一まともに話せる相手だから、コミュニケーション取ってる。」
「おにい、超絶美少女に話しかけるってすごくない!?ちょっと家でドヤってた理由が分かるわ。」
「いや、別に美少女とか関係ないだろ。」
「はぁ〜。ま、いいや。とりあえず今日は疲れたし、近くのファミレスで食べていこうよ。」
「了解、そうしよう。確かに今日は疲れたね。」
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