第12話

「 明日遊びに行くね 」


 「 急だね 」


相変わらずの妹との会話を続けていると、気がつけばアパートの敷地内まで帰って来ていた。


 カバンの中から鍵を取り出し、自分の部屋まで歩く途中、1人の女性が突然奇声を発する。


 「 ねえ!開けてよ!!!!! 」


 その女性は、ドンドンと力強く玄関を叩く。


 喧嘩でもしたのだろうかと、なるべく関わらないように入ろうとするが、なんとそこは隣の部屋の前。


 つまり、女性が叩いているのはあの早乙女瑠威の部屋。


 怒るのではないかと心配するが、出てくる様子がない。


 彼女なのか?それとも、家族か仕事関係の誰かだろうか。


 どちらにしろ、私には関係がない。


 見ないようにと鍵を開けようと部屋の前に立てば、隣の女性はまた叫び出した。


 「 どこに引っ越しても私、探し出して追いかけてやるんだから!!!!こんなに思ってるのに、いつも避けてばかり!酷い!!!!」


 「 …ん? 」


その言葉に、先日の最悪の出会いを思い出す。


 『ストーカー?』


 怒っているようで、怖がるようなあの表情。


 早乙女瑠威は人気小説家で、ルックスも完璧の為ファンも多いと聞く。


 メディアに疎い私たち家族は誰もその正体に気が付かなかったが、そんなに人気な人物なら、ストーカー被害に遭っていても不思議ではない。


 「 勝手に部屋に入ったから怒ってるの?だって、心配なんだもの。家事苦手だってインタビューの記事に書いてあったから 」


何も知らない私にも分かる。


 この人はおかしいと。


 立ち去る様子のないその女性に、私は勇気を振り絞った。


 「 あの、近所迷惑です 」

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