第10話 遠出と変わり者
なだらかな森の道を、
今二人が進んでいるのは、
目的地は森を越えたあたりの場所。
けれども急ぐ旅ではない。かぽ、かぽと道を行く速度は緩く、轡を並べてのんびりと二人はお喋りをしながら旅路を進んでいた。
「
「そりゃあ私だって男だからな」
くつくつと
「下界の街だって、男はそこそこ馬に乗れなきゃ生きていかれないんだ。放牧をするし、行商にも行くからな」
「悪い、失礼なことを聞いたな。俺は下界の事情はあまり知らなくて」
「いいんだよ。山や平原の方と比べたら、
「そうなのか?」
「戦をするとしても、基本は篭城一択の都市だからなあ。街の周りを深い堀と土塁、それから高い壁で囲んであって、攻めるより守る方が強いんだ」
生まれてこの方、
自分の話に興味を持たれると嬉しいものだ。ついつい饒舌になって、
「下界はそんなふうになっているんだな」
「はは、
「ああ。
「
聴き馴染みのない名を、
「俺の
「面白そうな人だな」
「面倒で変なやつだ。ちなみにこれから使いに行く先でもあるぞ」
何を思い出したのか、
「まあそろそろあいつの
空を振り仰ぐと、太陽が中天にかかっている。そろそろ昼時だと納得して、
「そうだな、ちょっと急ごう、か───?」
「
ぽかんと口を開いて立ち尽くす
「どうかしたのか」
「ろ、
「あれ?」
つい、と伸ばされた指の先を
白っぽい木々の陰から、おかしな奴がこちらを覗いていた。
白い帽子に白い服。片手に花をぶらぶらとさせている。そこまではいいのだが、問題は色の白いそいつの顔だ。
目にあたる位置に、真っ黒で丸い大きな玻璃か黒曜石が二つも張り付いている。目玉が飛び出したように見えて、絶妙に気味が悪い。未知の格好をしたそれに、
深いため息を吐いて、
「……
「よっ、
「薄気味悪い。
すげなく
隠されていた
婚礼の直前に持たれた話し合いの前に、
驚いている
「やあ、
「あ、はい。その節はどうも」
慌てて
「ははは、
朗らかに笑って
「おい、
「失礼ではない。こいつは警戒してもし足りないやつだ」
「警戒してもって、どういう意味だ?」
「いろんな意味でだ」
頑として警戒をやめない
しかし
「
「昔から色々してきただろうっ」
「色々か〜。ま、確かにそうだったな!」
「自覚があるなら不用意に近づくなよ」
「そんなつれないこと言っちまってぇ」
がるがると犬歯を剥く
飛んできた花が一輪、
それを成功と見て取ったのか、
「お近づきの印さ。受け取っておくれよ」
「あ、ありがとう」
「おい、
「まあまあ
「……ちっ」
両手を広げて促す
反抗的な態度を取りつつも従うのは、たぶん、昼飯という言葉のおかげだ。先ほどから
そういうことなら仕方がないと、くすりと笑って
そんな
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます