異世界日記

クルミム

第1話


目を覚ますと、見知らぬ空が広がっていた。


周囲を見渡すと、見慣れない植物や奇妙な生き物たちが目に入った。


「ここは…異世界か?」


昔から異世界に行くことに憧れを感じていたからなのか、すんなりと現状を受け入れることができたのかもしれない。


「と…とりあえず、飲み食いできるものを探さないと」


立ち上がり、周囲を再度見渡してみることにした。


「え、なにこれ…」


周囲数キロ先には地獄と形容するにふさわしいほどの荒々しい雰囲気が漂っており、見た限り他に進めそうな道も同様に淘汰されていた。


「どうしよう…」


食べ物や飲み物を探すと言っても、この周りには僕が倒せそうもないくらいすばしっこいうさぎや、湖もないから水分すら確保できない状態だ。


数時間悩んだ末に思い立ったのは、覚悟を決めて地獄のような場所にあてを探しに行くことだった。


「行くか…」


地獄に向かう最中、ふと自分の中で疑問が湧いてきた。


(おかしいな…以前の僕だったらここに来た時点で仰天して失神の連続で頭がおかしくなってもおかしくないはず…それに転生特典としてのスキル獲得演出すらないのはどういうことだ?)


疑問がひとつふたつと出れば倍になって帰ってくる。

考えても仕方ないので試しにいつものを叫んでみた。


「ス…ステータス」


「…」


何も出ない。


分かっていたが、ここに来た時点でほぼ詰みなのに他に希望なんてあるわけないのだ。


「着いた…」


着いた先には青紫の暗雲が立ち込める空に、ジャイアンシチューを煮詰めたような湖がそこかしこに散らばっており、そこからドロドロとした流動性のあるバケモノが見え隠れしている。


「なんで生きてるんだ?あれ」


分かっていたが、見渡した時点でほぼ地獄なのにここに希望なんてあるわけないのだ。


「!?」


突然、膝から崩れ落ちた。


「いってぇ…」


手足が痺れてきた。何が起きた?

多少の焦りと共に疑問が脳裏をよぎる。


「そうか…」

気づいた瞬間には口が開かなくなっていた。視線を向けた先には湖から出る謎のガスが目に入った。


(毒ガスか)


余命いくばくかの最期に僕は何故かこんな時でもパニックにならずにいた。それどころか虚しささえ感じるほどに。


(うぅ…僕の人生なんにもなかったな…)


気持ち悪くなってきた。


(親に勉強しろと急かされ結果は結びつかず、成績は中の下、授業中に屁を漏らして皆に笑われるし、話しかけられてもキョドってしまうから友達はできず…)


(勇気があれば)


(物覚えが良ければ)


(屁を漏らさなければ)


(もっと自由に生きることができれば)


後悔の念が次々と頭の中から湧き出てくる。僕は思っていたのかもしれない。心のどこかでまだ時間があるから再起が見込めると。


意識が朦朧としてきたが、それでも僕は後悔を綴った。


(友達ほしかったなぁ…)


そこで僕の意識は途絶えた。

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