第3話
今日は近所にある不人気ダンジョンの【無の泉】に来ている。
この世界のダンジョンは【赤・青・緑・黄・無】この5つの種類がある。
そして、ランクがA以上になると難易度が急激に上がる。
今日来ている無属性のダンジョンが不人気な理由は敵の強さに対して得られるメリットが少ないからだ。
例えば赤のダンジョンにいるモンスターが落とす魔石は赤く、火にまつわる魔道具と相性がいいなど、色によって魔石の用途が変わってくるのだ。
もう気付いたかもしれないが、無属性の魔石はまだ、用途が判明していないので、値段が低く見積もられている。
「はぁ、俺だって稼がないといけないからこのダンジョン来るつもりじゃなかったんだけどなぁ」
ダンジョンに入った瞬間にカードに魔力を込める。
【カード:選択「月夜」召喚】
月夜を召喚すると周囲の温度が少し下がったかのように感じる。
「マスター呼んでいただいてありがとうございます」
「こっちこそ来てくれてありがとね今日は初めてのダンジョンだから手堅くいこうかなって」
「なるほど...陽鬼さんだと手堅くとはいきませんからね」
そうなのだ。
元気っ子な陽鬼は強いんだけど...周囲のこと気にして戦おうとしないしな。
「では、マスター行きましょうか。ご安心してください。マスターの壁になる者は全て処理して見せますから」
天使的ほほ笑みが一瞬黒く染まった気がしたが...
うん。月夜も暴れるときはヤバいから俺がしっかりと見ておかないとね。
「月夜任せるよ」
今回【無の泉】に来ている理由は、探索者ギルドからの依頼だ。
Bランク以上の探索者の元には定期的に依頼が飛んでくるのだ。
ちなみにBランク未満の探索者は自分でクエストボートに貼られている依頼を受けて実績を積みランクを上げていく。
だが、ランキング2500位以上は無条件でAランク探索者に押し上げられるのだ。
依頼の話に戻ろう。
探索者ギルドから送られてきた依頼内容は最近できた無のダンジョンである【無の泉】の階層数とBランク探索者でもクリアできるのかというレベル調査もある。
正直捨て石扱いだ...Bランクなんてごまんといるからなのかもしれないが。
ただ、その分依頼を達成できれば実績として十分なものを積める。
そして俺には頼りになるモンスターも従えてるから
俺はこいつらを信じてる。
俺が無能なせいでBランクどまりだと思ってるからな。
[月夜視点]
ふむ....またマスターが思案顔、暗い顔をしていますね。
もしかするとこの先には強敵が待ち受けているのかもしてません。
マスターのためにも我々が頑張らねば...
ボソッ「私は、マスターより上がいるだなんて状況に甘んじて居れるほど我慢強くないのですよ」
「ん?月夜何か言ったか?」
「あ、いえ、すいません独り言でした。マスターはお気になさらず」
さて、マスターとたわいもない話をしながら現れるモンスター共を処理していましたが、やはりすぐにボス部屋に着きましたね。
扉の先にいる気配を感じるに素の状態での戦闘ではマスターに被害を出してしまう可能性が上がってしまいますね。
さて、マスター
血を頂きますね?
[篠塚咲夜視点]
15階層で終わりを迎え残りはボス部屋のみとなった【無の泉】。
そして扉を開くとそこには広く真っ白な空間がどこまでも続いていた。
そんな部屋に一点だけ黒く渦巻く何かが揺れていた。
「マスター...あのモンスター相手に素の状態ですとマスターに被害を出してしまうかもしれません」
「いいよ。月夜のことを信じてるからね。いつものようにしていいよ」
「マスター、ありがとうございます」
そうして俺は、首をさらけ出すと月夜が抱き着いてきて血を吸い始める。
徐々に目の色が赤色から黄色がかっていく。
まるで月が高く昇る時のように。
「マスター、今日も大変美味でした」
「それいつも言ってくれるけど褒めてる?」
「もちろんでございますよ」
クスっと月夜が笑う。
俺なんかの血でこの笑顔が見れるなら捨てたもんじゃないよな。
黒い渦に変化が現れる。
黒い渦が部屋に順応するかのように白に染まっていく。
全てが染まり切ると渦が弾け、何かが生れ落ちる。
純白の渦から現れたのは、純白の騎士だった。
デスナイト...は漆黒だから違うとして、あんな騎士は見たことが無い。
それにデスナイトはオスのモンスターと言われており、目の前にいる純白の騎士の女性のような鎧は着ていない。
新種のモンスターと頭によぎったがそれを知るすべが今は無い。
今俺にできることは、月夜を信じてあげること。
「月夜、任せたよ」
「マスター、任せてください。そして見ていてくださいね」
月夜が俺から離れようとした瞬間に純白の騎士の姿が消える。
否、こちらに突っ込んでくる。
そして月夜と俺を同時に一刀両断せんと剣を振り上げその振りあがった剣が俺ではとらえることのできない剣速で振り下ろされる。
そしてその剣が月夜に届き、真っ二つになる。
「主不在の放浪騎士風情がマスターに気安く触れるとは思わないことですね。さて、マスターを待たせること自体罪に値しますので、さっさとおわらせてしまいましょうか」
真っ二つになった剣の先端を掴み、凍らせて完全に破壊する。
「貴方は、マスターに選ばれるほどの実力があるように見えませんので――」
そこから先の言葉を俺は聞き取ることが出来なかった。
俺の目の前から消えた月夜が純白の騎士に拳や足を打ち付けるたびにその部分が凍っていき、完全に動かなくなった純白の騎士に向かって血で創造した槍を投擲する。
その槍は寸分たがわず体を貫き、月夜が指を鳴らすと
純白の騎士が氷の塊に変わり果て、足元から崩れ落ちていく。
[?????]
ここはどこなのだろうか
ただ、この部屋に居ていいのは私だけだ
なら目の前にいる2体の存在を許すことはできない
自分の出せる全力で目標へと駆けていき、鞘に納まっている純白の剣を振り上げ、それを振り下ろす。
それで終わると私は思っていた。
それがいつの間にか終わっていたのは私だった。
身体の感覚は無く、迫ってきている槍を避けることはできない。
私はこんな子に負けるのか
あぁ、寒いな
哀れな者を見る目で見るな
私は
そこで意識が途切れる。
――さようなら
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます