第85話

―――夢の中のリオはアタシが眠っているベッドの端に腰を下ろしていた。


そして何も言わないでアタシの頬を指でなぞる。



それだけで切なくなる。


夢ではこうやってリオはアタシに触れてくれるのに、どうして現実はそうじゃないの?



アタシの彼を想う気持ちが大きすぎるの?



「沙良……」



ほら、


名前だってこんなに艶めいた声音で呼んでくれるのに……。



目を覚ましたい!


アタシに触れる、アタシに囁くリオが見たいの。



だけどこれは夢なの……覚めてしまったら、彼はきっとこの場所にはいないんだから。

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