三姉妹が核戦争に巻き込まれ最後は死ぬ話

@knowmesow

穏やかな日常

いつもの朝 (1)長女の視点


朝の静けさが心地よくて、私と三女はもうすっかり庭にいる。まだ太陽が低い位置にあるうちは、空気が澄んでいて、涼しい風が頬を撫でていく。家庭菜園ではトマトやきゅうりが一斉に朝露をまとい、光を反射してキラキラと輝いていた。私は手にしたカゴに、熟したトマトを一つずつ摘み取って入れていく。とてもいい色だ。赤く、丸く、見るからに美味しそうなトマト。




「次のはまだ少し緑だね」


隣で土をいじっている三女に、ちょっと声をかけてみる。彼女はじっとりと集中して、きゅうりの葉っぱに触れている。




「うん、もうちょっとかな。あと少しでいい感じになると思うよ」




三女は小さな手で葉っぱを撫でながら答える。彼女はこの家庭菜園を自分の小さな世界みたいに大事にしている。私たち姉妹にとっても大事な場所だ。ここで育てた野菜を食卓に並べるのが、私たちの生活の一部になっている。両親がいなくなってから、特にそれが大切になった気がする。




「よし、これくらいあれば朝ご飯には十分だね」


私はトマトといくつかの野菜をカゴに詰め、立ち上がる。土を払いながら、ふと家の方を見る。窓はまだカーテンが閉まっていて、次女が寝ている部屋は真っ暗だ。彼女はいつも朝が弱いんだから。




「お姉ちゃん、今日の朝ご飯は何にするの?」


三女が私に尋ねてくる。まだ幼い彼女の目は期待に満ちている。




「トマトのスクランブルエッグにしようか。あと、庭のハーブを使ったサラダもいいね」




彼女は満足そうにうなずいて、再び土をいじり始める。私はカゴを抱え、家の中に戻る。台所に立つと、いつものルーチンが始まる。卵を割って、トマトを切って、フライパンに油を引く。ジューッと音がして、トマトが香ばしく炒められる匂いが台所に広がる。この匂いを嗅ぐと、いつも少し安心する。私たちの家、私たちの日常だ。これが私たちの普通で、私が守らなきゃいけないものだって思う。




「お姉ちゃん、何か手伝う?」


三女が小さな声で尋ねてくる。彼女はいつもこうして手伝いたがる。




「うん、ハーブを摘んできてくれる?」




彼女は笑顔で外に飛び出していく。小さな足音が砂利道を踏む音が、朝の静けさを少しだけ破る。すぐに戻ってくるだろう。




それにしても、次女はまだ起きてこない。いつも朝ご飯ができる頃にノロノロと起きてくるんだから。私は苦笑しながら、フライパンを振る。彼女が寝坊するのはいつものことだ。なんだかんだ言って、ちゃんと起きてくるんだから気にしないでおこう。




「ハーブ取ってきたよ!」


戻ってきた三女が、摘んできたばかりのハーブを私に差し出す。香りの良いローズマリーとバジル。私はそれを受け取り、サラダにパラパラと散らす。これで朝ご飯はほぼ完成だ。




「次女を起こしてくるね」


私は手を拭き、階段を上がって次女の部屋に向かう。ドアを軽くノックすると、奥からボソボソと何か言っている。寝ぼけた声だ。




「朝ご飯できたよ。早く起きなさい」


いつもこのくらい言わないと、次女はすぐに布団に戻ってしまう。階段を下りる途中で、彼女の足音が聞こえてきた。やっと起きてきたみたいだ。




私たち三人は、いつものテーブルに集まって朝ご飯を囲む。次女が眠たそうに目をこすりながら椅子に座ると、三女が嬉しそうにトマトサラダを差し出す。いつも通りの朝。平和な、何も変わらない朝。




世界がどうなっていようと、少なくともこの家の中では、変わらない日常が続いている気がする。

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