アニメの悪役の後を継ぐ女は悪役獅子の夢を見るか?
鍛冶屋 優雨
第1話
「ぬるいぞ!」
ホワイトキングが繰り出した貫手で、ライトレンジャーレッドの胸を貫く。
「ぐはっ!」
レッドは、ホワイトキングの腕に貫かれた自分の胸をバイザー越しに眺める。
「レッド!!!」
「嘘だろ!レッドが!」
「クソっ!動け、俺の身体よ!」
倒れたライトレンジャーのブルー、グリーン、イエローがそれぞれ叫ぶ。
その叫びを聞きながら、ホワイトキングはレッドの胸から腕を引き抜く。
「あっはっは!敗者の泣き言ほど耳に心地よい言葉はないなぁぁぁぁ!」
ホワイトキングの腕が抜かれた事で、支えの失ったレッドの身体が壊れた玩具のように崩れ落ちる。
そして、ホワイトキングが倒れたライトレンジャーの3人にゆっくり近付く。
「くっくっくっ。怖いか?我の足音が貴様達へ告げる死の宣告だ。」
「クソっ!」
ブルーが悔しそうに地面を叩く。
ホワイトキングは、くだらなさそうに呟く。
「やれやれ。死を前にして、地面を叩くだけか?他の2人は寝転ぶだけか?主らの覚悟はそんなものだったのか?これなら始めから我が出ておけば、余計な犠牲を出さずとも良かったのにな。」
ホワイトキングは倒れたブルーの横に立ち、足を上げる。
「倒れた雑魚のうち、お前が一番気骨があるようだ。このまま踏み抜いて殺してやる。ありがたく思え。」
ホワイトキングの足がブルーの顔面を踏み抜こうとした時、
「やれやれはこっちの台詞だぜ!」
その言葉と共にホワイトキングの全身を黒い電光が貫く。
「ぬぅ!」
ホワイトキングは胸を押さえ、片膝を着く。
「この黒い電光は、ひょっとして奴か!」
ライトレンジャーイエローが希望を取り戻したように、電光が飛んできた方向を見る。
そこには倒壊したビルの屋上に腕を組んだ黒い影が立っている。
「ライトレンジャー達を倒すのは俺なんでね。ここで倒されたら困るんだよ。」
口元以外は木兎をモチーフとした黒いマスクに覆われた黒尽くめの男が皮肉気な口調でホワイトキングに話しかける。
その姿を見てホワイトキングは叫ぶ。
「お前は、ブラックキャット!バカなお前は我の手で殺したはず!」
ブラックキャットと呼ばれた男は唯一、マスクに覆われていない口元に皮肉気な笑みを浮かべ、
「それこそ手を抜きすぎたんじゃないか?猫は9つの命があるって言うしな。」
ブラックキャットがそう嘯くと、ホワイトキングは苛立ったように叫ぶ。
「ならば、後、8回殺すまでよ!」
ホワイトキングが神速の動きでブラックキャットに近付く、
ブラックキャットは全身に黒い電光を纏い、ホワイトキングを迎え撃つ、
「やって見ろよ!昔から言うだろ!ヒーローに2度同じ技は通用しねぇ!喰らえ!ブラックライトニング!」
ブラックキャットの全身から黒い電光が疾走り、ホワイトキングを貫く!
ホワイトキングは黒い電光に貫かれ、地面に倒れる。
「バカな!この我が、ここで死ぬのか・・・!こんな奴に・・・。」
ブラックキャットも全力を使ったのか片膝を着く。
「バカヤロー、死んでくれなきゃ困るぜ。ライトレンジャーと戦った後で、さらに俺の全力の必殺技を使ったんだからな。」
ホワイトキングのマスクや鎧がエネルギーがなくなり、形成できなくなったのか素顔を表す。
そこには草臥れた男が横たわるだけだった。
そのホワイトキングだった草臥れた男が最後に呟く。
「あぁ、陽子、すまない・・、君が愛した世界を・・、そして、君を殺した世界を壊すことができなかった。」
草臥れた男が白い焔に包まれる。
それを見たブラックキャットが叫ぶ。
「ホワイトキング!お前、まだ力が残って・・・!」
草臥れた男がブラックキャットを手で制す。
「大丈夫だ。ホワイトキングのマスクがなくなって正気に戻った。すまない。謝って済むことではないがな。」
1都市の崩壊、ライトレンジャーレッドの命を奪った悪行は死んだとて許されることではないだろう。
そして白い焔に包まれた身体が崩れていく。
しばらくしたら白い焔は消え、残った灰は風に吹かれて飛ばされていく。
都市の残骸には倒れたライトレンジャーの3人とブラックキャットのみだった。
「とりあえず、終わったな。救難信号を発信するぜ。」
ブラックキャットが残されたライトレンジャーの3人に話しかけ、信号を発信する。
「もう何もできねー。」
ブラックキャットが後ろ向きに倒れる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
それがアニメ、「ライトレンジャー」に登場する一期目のボス、ホワイトキングの最後だよね。
この後、ブラックキャットが自分の命を一つレッドにあげるシーンがね。感動するんだよね〜。
でも、私は何でホワイトキングのコスチュームを着ているのかな?
「何だ、てめえは!おかしな格好しやがって!」
うん。目の前には怖そうな職業の人達が5人いるね。
敵意が身体に刺さるくらい、こちらに向けられているよ!
そして私の後ろには、襲われそうだった女性がいると・・・、
「変な格好だけど、助けてくれるならあんたでもいい、助けてくれぇ!」
えぇぇ!おじさんかぃ!美少女とか美人の女性じゃないんか〜い!
まぁ、このおじさんが実は横領とかしていて、悪いかもしれないけど、この状況で目の前の怖い人達が私を見逃すとは思えないしなぁ。
不思議と私は目の前の怖い人達を恐れてはいない。
後ろのおじさんを助けようと思うけど、私にできるのかな?なんて考えない。
今の私には目の前の怖い人達を一掃することなんて簡単にできると思えるのだ。
決めた!
とりあえず、目の前の怖い人達は気絶してもらおう!
私がそう決断すると、バイザーに、
「ホワイトキングモード発動」
と文字が写し出された。
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