烏の黙示録
毎朝バナナ
天皇暗殺編
鷹と烏(たかとからす)
「ぜひ、お願い致します!」
「ありがとうございます!」
俺の名前は鷹村真。東京にある大手銀行で働く銀行員だ。今日は営業で大手のIT企業に訪問していた。たった今、1億円を融資する契約を取り付け、天にも昇る思いだ。
(よっしゃあぁぁぁぁ!!!!)
心の中でガッツポーズをしているのが分かる。入行三年目、26歳にしてこれほど金額の契約を取り付けたのはこの銀行では俺が初めてだ。それが嬉しくてたまらないんだ。
「鷹村、よくやった。それにしてもいきなり1億円融資してくれって珍しいケースだよな。しかも大手だぞ。」
「確かにそうですよね、気分上がりすぎてあんま考えてなかったですけど・・」
「まぁ、信頼できる企業だ。心配は無い。そんなことより今日一杯どうだ?」
「すみません、パスで!!」
課長からの飲みの誘いを断りすぎな気もするが、俺はほぼ毎晩、皇居の周りを走るのが日課になっている。学生の時から陸上の長距離をしていてバリバリ現役で走っている。走らないと身体が訛るんだよななんか。
今日は満月、季節もすっかり秋になり比較的快適な気温だ。お気に入りのランニングシューズを履いてゆっくり走り出す。
「ふぅ・・・」
一周5キロの外周を走った俺は立ち止まり左手で水を飲み、右手で携帯をいじっていた。
その瞬間、新幹線が目の前を過ぎたような強い突風が起きた。
「何だ・・!?」
風の吹く方に目をやると黒いローブにフードを被った何かが走っていた。それこそ新幹線のような速さだ。
「!!?」
そして一瞬だが月明りに照らされ、その何かの手には大量の血が付着していたのが見えた。
「私が追う、お前たちは周辺の警護を!」
若い女性の声が皇居の中から聞こえたと思ったら、再び似たような様相をした何かが俺の目を通る。先程の何かより華奢で女性の体形のように見える。その二つの何かはまるで泣き叫ぶ烏の様であり、目の前から一瞬で消えた。
「何なんだよ一体・・」
「あ、見ちゃったか。ごめんね。」
気づいたころには遅く、俺は背後から何者かに手刀を喰らってしまい気を失った。
「うっ・・・・」
どれくらい気を失っていただろう。目を覚ますとそこは綺麗な洋館の書斎のような場所だった。
(皇居か・・・?もしかして)
「お、起きたか。ごめんなさっきは。」
「!!?」
先程背後でした男の声だ。姿は見えない。話そうとしたが口はガムテープ、手と足はロープで椅子に括られ身動きが取れない。
「凛ちゃん、殺す?」
「あぁ、私の姿を見られた以上殺すしかない。」
凛と呼ばれる女性は俺の眼前で見下すような目をしている。彼女の声は先程の若い女性の声であった。歳はおそらく俺と同じくらい、黒髪ロング、、華奢な体形でめっちゃ美人だ。
死に瀕している状況でもその女に見とれている自分をぶん殴りたくなった。こんな美女に殺されるなら俺・・・・
「hふhfしうfひうfすhすh!!!!!!」
いやいやいや、やっぱ死にたくねぇよ俺!!必死の抵抗で不自由な口で叫び続ける。
「!?お前、今日の・・・」
凛(?)の表情が変わった。驚いている顔だ。
「ビリビリビリッ」
彼女は急に俺の口のガムテープを剥がした。
「お前、さっき営業で来ていた・・・確か鷹村真と言ったか?」
「そうだけど・・何で俺の名前を。」
「1億円の融資、通ったろ?私はその会社に勤めている。」
こんな偶然があるのか。営業の帰り際、廊下で一瞬見かけたのを思い出した。その時はマスクをしていて顔は良く見えなかったが確かに彼女だ。
「一体、何なんだよお前は・・・」
「予定変更だ、鷹村協力してくれ。」
俺の頭はすでにパンクしていた。
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