剣戟
「人間にとっちゃ真剣なんだろうけど、わたしたちにとっては遊びだよね。これ」
さゆがそういう。
雪女、天狗など、上級の妖怪は体が破壊されても完璧にノーダメージである。
妖力の増減自体が命に係わるのであって、ボディの損傷なんて毛ほどにも感じない。
いくら体をミンチにされても妖力そのものを減らさない限り一瞬で元に戻る。
腕を切られても腕を妖力でばっちり繋げて次の瞬間からぶんぶん振るえるようになる。
つまり妖怪にサブミッション(関節技)は無意味である。
ヒュン――――――――
「おお! うまいじゃん! 剣術! 型キレイ~ 妖術は使わないの~先輩!」
桜雪さゆの首筋に向かって雪女の
先輩の技の綺麗さは素直に認める桜雪さゆ。
それをさゆは、後ろに飛んで避ける。
そのまま雪女の
何度か一文字斬りを繰り返し、と思ったら、
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン――――――――
刀が空気を切る音が繰り返される。
天高く飛び自分の体を地面と水平に倒し、車輪のように回り始める。
「お。面白い動き! じゃあね――」
桜雪さゆはジャンプし、子宮にいる時の赤ちゃんみたいな体勢を取る。もちろん刀は構えたまま。そして自分の体を車輪の回転の如く高速で回し始める。
「
技名を叫び桜雪さゆが車輪の如く雪女の
「
雪女の
二人が地面に足をつけた。
「くっ!」
雪女の
先程のさゆの説明通り、単なる刃物では上級妖怪にはノーダメージである。だが桜雪さゆの刀は桃色に淡く輝いていた。
雪女の
「せんぱーい、もっとがんばってくださいよ」
刀で右肩をポーンポーンと叩いてる桜雪さゆ。
「桜閃・夏双乱」
と急に宙に浮き、先程の桜閃・夏乱を右手に刀、左手に妖気で作った刀の形をした半透明の桃色の妖力を持ち、回転しながら突っ込み、両手で切り裂こうとする。
「
雪女の
「なんちゅーか」
永倉新八がうめく。
「どうしました?」
水鏡冬華がこたえる。
「いやあ、なんちゅーか、妖怪の剣術って参考になるようでならねーな。あれ、雪女が今はなったの、
「まあ、霊気や妖力が原動力の技がありますので……」
「ひきょー」
「い、いや、でも人間の方が技の研鑽はすごいですよ? 妖力とか霊気とか使うと結構簡単にできないことができちゃいますから、技が育ちにくいんです」
「ぶーぶー」
「あはははは…………」
などといっている間に雪女ふたりは普通に斬り合っている。
雪女の
さゆがテキトーっぽい一文字斬りを繰り出す。
「わたしをなめ過ぎよ!」
当然、雪女の
「アレは逃げた方がよかった」
桜の花びら(というか永倉新八)がそう言葉を紡ぐ。鋭い目つきで。
「気づいているんですか? 永倉さん」
「勘だよ」
「すごいですね……」
水鏡冬華が感心したような口調でつぶやく。
と――
いつの間にかさゆが雪女の
「出雲・後ろ車。出雲建さんに雲の上でさ~今のやられて負けたからわたし覚えちゃった♪」
剣を跳ね飛ばされるその威力に逆らわず、腕が後ろに回った所で右手の剣を左手に移し、跳ね飛ばされる勢いも味方につけて相手を刺す。
曲芸じみた出雲建の隠し技である。
「ぐっ、ふう………まだまだよ!」
雪女の
正眼の構えを取る桜雪さゆ。
「妖怪、下駄手裏剣♪ 妖怪アンテナも付けちゃおっかな~? 剣の勝負は、面と面との取り合い、か」
だが、さゆが面白そうな顔で下駄を足でぶん投げる。正眼の構え関係ない行動をとった。
首を反らし、雪女の
下駄は妖力でさゆの足元まで戻った。
「
幻惑効果ありの回転切り。冬華の
「
炎を纏った大暴れ。
「
冷気の嵐
「
乱舞技
そして、技の畳みかけを食らい反撃のチャンスが見いだせないまま、雪女の
「
ビュッ――
ズドオオオォォォオォォォォォオオォォォオオオォン――――――――!
「ゲハアァッ! ゲホッ! ゲホッゲホッ、ぐぅぅぅううぅぅぅぅ!」
ものすごい出が早い刀から出た光線の突きをみぞおちに食らって1町ほど吹き飛ばされ、せき込むことに。
「せんぱいよわいよ~まだ毎回雲の上でわたしによって地面とキスを強要されてるオッスキュンの方が強いかもー」
笑顔で汗ひとつかかず、桜雪さゆは雪女の
オッスキュンとは
日本史史上初めての女装男子といえるかもしれない。
「くそ、さすが木花咲耶姫さまの懐刀といったところか…………」
雪女の
「くそなんて下品よ~
品性は大事だぞぉ、常日頃から磨いておけ~~♪」
「それ、ウガヤ様の口癖…………」
雪女の
「あったり~」
左の人差し指を立てて、桜雪さゆ。
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