エピローグ

事が終わって その1

 新選組の詰め所で新選組と水鏡冬華と桜雪さゆと雪女の二三枝ふみえ、そして日本武尊やまとたけると出雲建と八百万の神々がおじゃましていた。

「さっきフランスのラ・レアル止まってたよー。港にガレー船てどうやって日本まで来たのかふっしぎー!!

 あの有名な白鯨、喜望峰きぼうほう(ケープの岬)の近くにいたような。ガレーじゃ白鯨に勝てないよ~。

 それに喜望峰の暴風や暗礁どうやって潜り抜けたんだろ。

 チリ、アルゼンチンの下のドレーク海峡並につらくない? 最大15メートルの巨大な波と強風にガレーじゃ耐えられないと思うんだけど……ふっしぎー!!

 てゆーか、今の時代ラ・レアル使ってたっけ? フランス。ラ・ロワイヤルすら時代おかしいような……? 時空の歪みあるんじゃない?

 歌川国芳の浮世絵にあったスカイツリー今そこから見えるしさー。でもあれ江戸だよね。ここ京都なんだけどー。

 歌川国芳が予言した携帯電気端末持ってる芸者さんいたよ! 基地局ないつーのにメールのやり取りしてた」

「歌川国芳て3年前にコレラでおっちんだ絵師じゃねえか。自分の死ぬタイミングを予知して絵に描き込んだって絵描き」

 永倉新八がそういう。

「コレラって、脱水症状対策で何とかなるじゃない。

 早期の水分補給と塩分補給。これから有名になる、カントンの海水療法で楽勝。

 コレラ、チフス、リンパ腫など様々な病気に海水注入療法を用いられるわよ。

 ルネ=カントンの海水療法って名前で1897年――だから今から33年後ね。――のフランスの生物学者ルネ=カントンが血液のミネラル組成と古代の海水組成が近似していることを発見し、ガン患者も完治させるわ。

 海水が3.5%血の塩分が0.9%だから海水を薄めてね。海水は浸透圧が高いけど水で薄めて浸透圧を調整すれば心配いらないわ。

 危険だっていってるの蒸留水か薄めてない海水と勘違いしてるんじゃないかしら?

 蒸留水血管に入れたらヘモグロビン破裂するわよ。塩水薄めてないの血管に入れたら赤血球縮んで金平糖みたいになるわよ。

 ヘモグロビンて一時的に少なくても大丈夫なのよ。

 足りなくなるとすぐ困るのが、『血管内の水分』これがないと人はショック症状を起こす。

 そこで役に立つのがカントンの海水療法。輸血なんて危ない危ない。アホ医者が気づいてないだけで免疫が反応する。

 輸血すると出血が加速される(GVHD(免疫混乱)、抗凝固剤、放射線照射が原因)ので、実は輸血は死の儀式。

 お湯500mlに小さじ1杯ってとこかしら。

 カントン自体は殺されかけるけど。わけわかめ。ガンを治すなんてえらいことをしてくれる! お前のせいでペニシリンや抗生物質が売れないではないか! 海水薄めたもので治療されたら! 儲けの種を潰すな! ってね。バカみたいな流れで。

 病気の原因は、人体の内部環境の乱れにある。

 海水の注入でその損なわれたバランスを元の状態に復元する。

 母なる海とか騒いでる奴らこそ気づかなきゃいけない治療法よ。

 クロード・ベルナールやアントワーヌ・ベシャンもこれを言ってる。

 対症療法のアロパシー医学や巨大な利権となる薬物療法には邪魔だったから。金儲けのね。

 近代医学は、症状を病気と捉える誤った発想よ。だから風邪を治す薬とか騒いでる。熱出すのは治療だっつーのに。自然免疫の。


 細菌理論パスツール:病気と闘うには症状を治療する事が必須。細菌こそがこの世の全ての病気の原因物質である 外から恐怖の大王がやってくるんだよ! これはウソ

 環境理論カントン:病気と闘うには病気が発症しない健康な体を作る事が必須。病気の酸性、低酸素の細胞環境は、有毒&栄養素不足の食事、有毒な感情、および有毒な生活習慣によって引き起こされる これがホントウ


 というのが本当なんだけど、ホントウは儲からない だからホントウを弾圧し、ウソで塗り固める。

 伝染病が広まってしまうのには公衆衛生上の問題。環境を汚した犯人がいる。環境理論。

 スペイン風邪、エボラ出血熱、デング熱、ペスト、ポリオ、ジガウィルス感染症、コレラ、あれら、それら、みんな詐欺よ。

 ペストが作られた病気で薬害を伝染病と偽ったのはその通り。

 1500年ごろ生まれたノストラダムスはペストの正体見抜いてたんじゃないかしら。奥さんまで失くしてるからね。

 でも正直に言うと薬害野郎に殺されるから詩の形にした。

 恐怖の大王ってね。

 自然療法を使う女の子たちを魔女と呼んだ『自然に治されたら薬売って儲けられないだろうが!』 外国人はこれから300年以上続けるわよ。100年ごとに疫病騒ぎ。怨念じみてるわ。

 1720ペスト、1820コレラ、1920スペイン風邪がくる…………ってね。そんな病気ないのに。治療薬という名の毒仕込まれた事による苦しみだってのに。どれも。

 マハトマ=ガンジーがもうすぐ――5年後にインドで生まれるんだけど。ナイチンゲールとガンジーが環境理論のカントンの理論で進んだ救世主よ。

 ペスト、コレラの時代ってどんな毒入れたんだろうね。わたしは竜神の体だから毒効かないけれど。

 『治療してあげるよって薬が本命の毒』って話はよくあるのよ。推理小説でね!」

 水鏡冬華がそういう。

「さすが巫女さん。予言めいたこと言うねえ!」

 永倉新八が、そう大声で言う。

 彼女はこの前これらの患者を脱水症状対策で完治させた。

 1858年7月にアメリカの船ミシシッピー号が日本にコレラを持ち込んだ――なんて噂も流れ、西洋人に対する印象はがたおちした。

「それはともかく忍法こむら返り! ニンニン!」

「春女……それって忍法なの?」

 そばを食べている水鏡冬華が半眼で見やる。

「妖術~~~~」

「お前、春女~~~~! 自然ならともかくこむら返りを意図的に起こすな! いてて」

 日本武尊やまとたけるがそう悲鳴を上げる。

「あいきょうあいきょう~うふふ」

「愛嬌ないわ!」

 オウスノミコトが足痛がりつつ怒りながら返す。

「足吊るのってミネラル足りてないからなるんだよ!(キラン☆ミ)だから天然塩舐めたら回復するよ。精製塩だとミネラルないし血圧調整のミネラルもそぎ落とされてるから血圧増えて終わりの悪化するだけだけどね!(キラン☆ミ)」

 と、出雲建いずもたけるが付け加え、外に出ていく。

「わたし、あんたらと新選組と仲直りした覚えないんだけど」

 雪女の二三枝ふみえが冬華のそばでそばを食べながら半眼でそういう。

「まあまあ、ウガヤ様のおかげで悲劇免れたんだし~先輩もそばの味堪能しようよーーおなかの赤ちゃんも食べたいって言ってるよ!」

 桜雪さゆが調子の良いことを言う。

「なんてあんたが赤ちゃんの気持ちまで代弁してんのよ……」

 まだお腹は外から全く分からない程度だ。

「すみません。ボクが斬った中にあなたの夫がいたと永倉さんから聞いて…………」

 沖田総司である。

「すみません。あなたには僕を恨む権利があります。命まで上げるわけにはいきませんが……」

「別に……いいわよ」

 恨みは消えてない目で雪女の二三枝ふみえは沖田総司を見る。が、

「ウガヤ様に説得されちゃったしそこらへんの事情は、昨夜あなたがいないあの時で大分片付いちゃったのよ」

「そ、そうですか……あの、じゃあせめてこの御守り、もらっていただけますか……?」

 そう言って、沖田総司は安産のお守りを雪女の二三枝ふみえに渡そうとする。

「…………」

 雪女の二三枝ふみえはそのお守りをしばらく見つめた。

「ダメ、ですか……?」

 手を引っ込めようとしたその時。

「ダメなんて言ってないでしょ」

 雪女の二三枝ふみえはお守りに手を伸ばす。

「ありがと。お腹の子も喜ぶわ。お礼に病気への抵抗力、あげてあげるわ」

 そっぽを向きながらお礼を言ったあと、沖田に手をかざす雪女の二三枝ふみえ。青白い光が沖田総司を包む。

「ええ! 雪女ってそんなこともできるんですか! ありがとうございます!」

 沖田総司も笑顔になった。

「ちゃんと栄養とって寝ないとわたしの術も意味ないけどね。夜更かし、夜の見回りは外してもらいなさい。精神張り詰める時間も短くする事、自然治癒が落ちるから」

「あの、どうして僕をそんなに気遣ってくれるのですか? 知らずとはいえ、雪女の二三枝ふみえさんの夫斬った本人ですよ?」

 申し訳なさそうに、沖田総司。

「わたしの夫は剣術に秀でていた。そんなあの人を倒したアンタが強敵にやられたとかじゃなく、風邪で死にましたとかなったら、間抜けで、夫も夜の星でがっくりするでしょうに! あなたは女遊び激しいタイプじゃなさそうだから梅毒はなさそーだけど。

 あれ『梅毒トレポネーマ』が原因で、『倒錯的な』性的接触などによって感染する性病だから。雪女は、あれの正体わかってるからわたしたち雪女に頼めば治る薬煎じてあげられるわよ」

 半眼で沖田総司を睨む女の二三枝ふみえ

「あはは、そりゃあ刀じゃなくて風邪で死んだとかなったらそうかもしれませんね! ありがとうございます、病気にやられたんじゃ確かにそう思うや!」

 沖田総司は大口を開けて笑う。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 水鏡冬華は、そばを食べた後、台所で3kgくらいの袋から別の容器に小麦粉を移そうとしている平隊士の手伝いをしていた。

「これ、もう! そんなね、自分は力あるからって粉物一気に移動しようとするとね――――」

「大丈夫ですって、あはは」

「あははじゃない! あ、あ゛、まずい――――!」

 水鏡冬華は両手で何とか抑えようとする。冬華は、胸を男性隊士に当ててしまう事になるが、このご時世、食べ物が無駄になるかどうかの瀬戸際の方が大事だ。

 小麦粉が移し替えようとして失敗し、床が真っ白に染まる。

 だが全部ぶちまけたわけではない。それが救いだった。

「だ~から言わんこっちゃない! もーもったいないー! 剣の使い方より覚えることいっぱいあるでしょー! 結婚しても妻に頼るつもり~!?」

 水鏡冬華は我慢せずにせいいっぱい喚いた!



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 外に出た出雲建いずもたけるは、

「君新選組で一番強いんだって? じゃあこれ受けてみてよ(キラン☆ミ)」

「いや、一番はおれっつーより服部武雄だ――」

 逆袈裟、袈裟斬りの3セット技x2&唐竹、袈裟斬り、一文字、逆袈裟斬り、逆風、左逆袈裟斬り、左一文字、左袈裟斬り、をほぼ同時かと思えるほどの速さで永倉新八に打ち込んできた。

「おい、今の驚きなんだが!」

 永倉新八は、後ろに下がりつつ高速で受けるが、何撃かヒットする。出雲建のうまい加減で切り傷はできないが。

「後半は八握神風やつかじんぷう。僕の得意技だよ(キラン☆ミ) 君の飛龍剣も、太陽の八握をさかのぼりするのは厳しいようだね。昔、太陽に近づいて羽根が溶けて落ちちゃった奴がいたんだってさ」

「人間超えてんだろ…………」

「君も人間超えてそうだけどね(キラン☆ミ)初見で八握神風あれだけ防ぐなんて。

 どうやら僕の王朝よりだいぶ文明は原始化したみたいだけど、剣術はそこまで劣化していないみたいだね。すごいよ!(キラン☆ミ)」

「直心影流剣術の榊原鍵吉、自得院流の高橋泥舟、一刀正伝無刀流の山岡鉄舟とまだまだいるぜ、今の時代には強い奴が! おい、このまま色々見せてくれや。本当に1500年前の出雲建なんかは知らねえが、剣は嘘をつかねえ。今の剣は本物だ! 日本武尊やまとたけるに一撃に殺された? 今の剣出せる奴がんなわけねーよ!」

 永倉新八が火のついた目で出雲建を見る。

「ウガヤ様やホアカリ様が返るまでならいいよ(キラン☆ミ)」

 出雲建も快く応える。そして左で剣を構える。そう、出雲建は左利きなのだ。

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