水火相入る
「あの人は剣客だったわ。わたしと出会ったのも伊吹山の中」
雪女の
「なに。恋愛話聞いて欲しいの?
そんなん雪女仲間集めて聞かせてあげりゃいいじゃん。ノリノリで聞くわよ、特に
なんでたかが下界の肉人形相手にいいふらしてんの。塩基4つしかねーじゃん下界の肉人形。
はげ。
塩基7つあるわたしたちとは月とスッポン! ペット並に寿命短いし人間って!」
だが同じ雪女の桜雪さゆは、(未来の21世紀の桜雪さゆと違って、生まれて間もないこの時期のさゆは、人間を繁殖力だけすごい遺伝子が壊れたおもちゃとしか思ってない)長い過去話は拒絶する態度を隠しもしない。
「悲惨な過去だの友情のお涙頂戴だの。
昔の因縁関係だのそういうのあまり興味ないんだけど。
友情だの因縁だの、そ~いうグチグチは嫌いだわ」
「まあまあ、さゆちゃん、塩基4つとか塩基7つとかはよく分かんねえが話ぐらい聞いてあげたらどうよ?」
夏だというのに桜の花びらにまとわりつかれて動きようがない永倉新八がそういさめる。
そんな永倉新八をさゆは振り返り鬱陶しそうに眺めながら、雪女の
「よかったわね! 聞きたい人いるってさ! しんちゃん(永倉新八)が聞いてあげるって!」
「わたしも彼と心通じ合わせる事で『
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「…………伊吹山の中、わたしと彼は出会った。わたしはこんな山の中に剣客が一体何の用か気になって、木の上で、枝に寝そべって見ていた」
そんな雪女の
「誰がは知らぬが手伝ってくれ!」
「え、え…………? 何を?」
普通妖怪といえば脅かす方である。だが、雪女の
「木の枝でいい。剣のように持て!」
「はぁ…………」
雪女の
「いやあああああああっ!」
剣客がなんかよく分からない動作でフェイント混ぜつつ剣技を繰り出す!
「ひっ、ひぃぃぃぃぃぃ!」
雪女の
「……………………」
剣客はそれを見て真剣な表情を崩さず、また何やら思案に耽る様子だ。
「こうではないか、では初撃はああしたほうが…………」
「あの、これは一体…………なんなの?」
尻もちをついた雪女の
「幕府派を倒すための奥義だ! 日本は世界に対抗するために、維新で新しい夜明けを迎えねばならん! その邪魔をする幕府派は倒さねばならん! 子に恨まれんとも 孫の世の為だ! オレ子どもすらいないけど!」
「っで、でも、幕府派って正しいって木花咲耶姫から聞いたような…………トーマスみたいな土佐の坂本龍馬、岩崎弥太郎、薩摩の五代友厚等の若者を積極的に支援してる外国人に操られるくらいなら(幕府もアームストロング砲とか買っちゃったけど)、ええじゃないか騒動してた方がマシかと…………今は人斬りが出てるからあれだけど、日本の治安がいいのは、下手すると弥生人が流入する前の縄文時代まで溯るって木花咲耶姫が言っていたし。
維新期の日本国と外国人資本家の繋がりは危ないって何度も咲耶姫から耳にタコができるくらい聞かされたし……東インド会社のシナ貿易独占権が廃止されたのが南蛮が日本に殺到している原因って咲耶姫から聞かされたよ…………? 1859年(安政6年)に相模国(横浜)に支店を設立したのがいい証拠じゃない?
アヘンの密貿易などに従事し、イギリス・インド・シナを結ぶ三角貿易で大きな利益を得たって聞かされたし」
「…………そのいでたちからして、君は雪女だろう。なぜ雪女がそんなに情報に強いのだ」
「え、だから、木花咲耶姫の情報を教えてもらっているんだけど…………」
「そうか。オレは
「えと、わたしは、雪女のふ、
尻もちついたまま
「オレは我慢できないんだ。目の前で人が苦しんでる。悲しんでいる!
人が困っているのを見て、見てないフリはできない!
助けてという声を、聞こえないフリはできない!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます