【魔女】は正義を唄う。
Aria
第1話 episode.0
そよ風が頬を撫でる、快晴の日。
大きな御神木の下で角の生えた少女は、白髪の幼い少女に「とあるお話」を読み聞かせていた。
むかしむかし、あるところに【魔女】がいました。
【魔女】はヒトに加護を与え、それと同時に厄災をもたらす存在です。
ある日、人々は正義と希望を胸に【魔女】と戦うことを誓いました。
すべてはヒトが明日を生きるために。…そうして人々は力を合わせ、見事に悪い魔女を殺したのでした。めでたしめでたし。
白髪の幼い少女は思わず声を上げた。
「えっ…?待ってよ、ノイラ!どうして【魔女】は殺されてしまうの」
ノイラと呼ばれた角の生えた少女は困ったように眉を下げた。
『【魔女】は確かにヒトを庇護下に置いたけど、多くの【魔女】にとってそれは気まぐれで行ったことに過ぎないの。自分の興味関心に忠実に生きる存在だからね、彼女たちは』
「…?どうしてそんなこと知ってるの?私、どこか聴き逃しちゃったのかな…」
そう言って慌てて自身の記憶を探る彼女を見て、ノイラは微笑みながら彼女の頭を撫でた。
『……貴方なら大丈夫そうね』
無邪気な風に遮られ、この声が彼女の耳に届くことはついぞなかった。
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