【10月16日完結】こじらせ・ぱらどっくす!〜真面目で清楚じゃ、振り向いてくれないからギャルになってみた〜

パスタ・スケカヤ

拗らせた人たち

第1話 真島澄は諦めきれない


 高校三年生、最後の日。わたしは募りに募らせた想いを形にした。

 

 告白。そう、愛の告白である。

 

 目の前に立つ黒髪短髪の青年。身長は少し私より高いだろうか。風に吹かれて、整えられた前髪がゆらりと揺れている。

 

 同じ高校の深い青を基調としたブレザーに身を包みわたしと向き合っている。

 

 彼の名前は『光野修司』。私がずっと想いを寄せてきた人だ。

 

 私は空気を思いっきり吸い込み、気合いを入れ直す。

 

 とめどなく鳴り響く鼓動が緊張感を更に強めている。一度落ち着こう。気負う必要は無い。シンプルに伝えるのだ。

 

 私は頬を紅潮させて言葉を切り出す。

 

 『ずっと前から好きでした。私とお付き合いして、くれますか……?』

 

 緊張で途切れ途切れになる言葉。先行する想いと、裏腹に押し寄せる緊張感。

 

 ずっと言いたかった、伝えたかった、形にしたかった言葉。

 

 ためにためて、実らせた気持ち。

 

 君に届くと信じて。

 

 数秒とも永遠とも思える沈黙。風がゆっくり吹いて、それを歯切りに沈黙は破られる。

 

 『……その気持ちには……答えられないよ……』

 

 やさしく震えたように紡がれる言葉。それは私が求めた答えではなかった。

 

 『……え?』

 

 一瞬何を言われたかわからなかった。聞き返すように生まれた疑問符。

 

 先程とは違う鼓動が私の胸の中で響き渡り全身に震えが生まれる。

 

 私の中で努力してきた信念が不思議と思い浮かぶ。

 

 それは、努力を否定されたように感じたからだろうか。

 

 それとも、一度自分を保とうとしたのかは分からない。

 

 だが、浮かんでくる思考は止められない

 

 

 ーーーーーー。

 

 私は失敗という言葉が嫌いだ。

 

 事前に最善の努力をして、たとえ望まぬ結果でも、自分の経験に落とし込むようにしている。

 

 今回も同じだ。

 

 彼が望む女の子『真面目で清楚な完璧美少女』を私は演じられていたはずだ。

 

 信頼度も、そばにいた時間も、一番長い。

 

 私が誰よりも彼のことを理解している。

 

 絶対に成功すると信じて勝負に出た。

 

 今回ばかりは失敗するなんて思いもしなかった。

 

 でも現実はそうじゃなかった。

 


 

 『なに、言ってるの?』

 

 理解出来ず、認めたくない現実を前に私の唇は震える。

 

 『僕じゃ、澄には釣り合わないよ……』

 

 淡々と冷たく連なる言葉。音のしない鍵盤を叩いているようにこもって聞こえた。

 

 心が見えない。感情を感じ取れないのだ。

 

 いや、私自身が感じたくないのかもしれない。

 

 『つ、りあわ……え?』

 

 頭とリンクしない言葉。理由を聞いてもやはり理解できない。

 

 これだけは。

 

 どうしても。

 

 これだけは、そんな簡単に諦めきれない。

 

 何年も準備してようやく貴方に辿り着いたのに。

 

 釣り合わない?

 

 まだわたしは足りないの?

 

 『じゃ、僕はこれで。……大学僕は落ちたんだ。春からは違う学校だし、もう会うこともないと思うよ。』

 

 帰路へと踵を返す彼。遠ざかる背中に私は駆け寄る。終わらせてたまるか。

 

 『いや!!!まって!!…私諦めないから!!!』

 

 私は彼のワイシャツの袖を引っ張り、足を止めさせる。

 

 涙が止まらない。

 

 行って欲しくない。

 

 なんで。なんで、なんで?

 

 なんで離れることになってるの?

 

 どうして。

 

 嫌。嫌。嫌。

 

 失敗したんだ。私は失敗したんだ。

 

 『ごめん。……いくね。』

 

 彼は涙を流す私に何も言わず、視線も合わさずに背を向ける。

 

 やさしく振りほどかれる手。崩れ落ちる私。

 

 ねえ、行かないでよ。

 

 見えなくなる背中。

 

 待ってってば。なんで、置いていくの。

 

 いつもなら、手を差し伸べて笑ってくれるでしょ?

 

 

 こんな彼を私は知らない。

 

 泣いてる私を一人にする彼なんて知らない。

 

 いつも傍で微笑んでくれた、勇気をくれた彼しか私は知らない。

 

 『っ……』

 

 私はその時に理解してしまった。

 

 彼に追いつくために、必死に努力していうちに『わたし、真島澄は修司くんのことを見失っていた』。

 

 

 

 「わたし、なんにも知らないや。……あはは。」

 

 乾いた笑いとこぼれ続ける涙。

 

 突然、空から大粒の涙が降り注ぐ。

 

 私の全身を濡らして、体を冷やしていく。

 

 冷めた心と冷えた体。

 

 寒い。

 

 

 私はどうすることも出来ず、ただ雨が止むのを待ち続けた。

 ーーーーーーー。

 

 「傘ぐらい……させよ。」

 

 刹那、見知った声に顔を上げる。

 

 目の前に現れた青年は『姫路想』。修司の友達だ。私たち三人はいわゆる幼なじみなのだろうか。小学校からの付き合いだ。

 

 「……ほっといて。」

 

 やさしく手渡される傘を私は冷たく振りほどく。

 

 「まだ寒い季節だ。風邪ひいたらどうする。」

 

 「なによ。振られた私をバカにしに来たの?」

 

 「ちげえよ。家まで送ってやる。さっさと立て。」

 

 「あんた彼女いないもんね。……なに口説いてるの?」

 

 振られて全てがどうでも良くなったのだろうか。私の冷たい言葉は止まらない。

 

 「お前みたいなやつ、好きなわけねーだろ。」

 

 「なら、優しくしないでよ。」

 

 「馬鹿野郎。いつまでも不貞腐れてんじゃねえ。…恋愛でって意味だ。大切な友達が泣いてんだ。ほっとけねーだろ。」

 

 「その大切な友達に振られたんですけど。」

 

 「知ってる。」

 

 「修司が私のことを嫌いだって?」

 

 「それは俺の知ってる修司じゃないな。」

 

 「……どういう意味?」

 

 「お前のこと嫌いだから付き合わないって修司がそう言ったのか?」

 

 「言ってない。」

 

 「なら、付き合えない理由があるんだろ。ほら、とりあえず立てよ。カンペキ美少女が台無しだぞ?」

 

 いつまでも不貞腐れていても仕方ないとようやく立ち上がり、想から傘を受け取る。

 

 「あんたのは?」

 

 「要らねえよ。」

 

 「濡れるでしょ。入りなさいよ。」

 

 私は強引に想を傘の中に入れる。腕に抱きついて引っ張ってみたが、中々思ったように入れることは出来ない。小癪な。

 

 「おおい!?やめろよ!」

 

 不意にくっつかれて嫌だったのか顔を真っ赤にして離れる。そんなに嫌がることはないだろうに。

 

 「……今日ぐらいいいじゃない。」

 

 人肌が恋しくてなんだか変なことを口走った気がする。

 

 寒いのだ。仕方ないだろう。

 

 「……全然嬉しくねえけど。そこまで言うなら仕方ない。」

 

 想は渋々傘の中に入ってくる。意外と体格が良くてゴツゴツとした体。頼もしさがあってくっつくと暖かくて安心する。

 

 修司にくっつく時とは違ってドキドキ感は無いが、悪くない。

 

 やや茶色味がかった髪色にサイドは刈り上げてある髪型。

 

 スポーツをやってるだけあって爽やかな印象を持たせる。

 

 「あんた何部だっけ」

 

 私は不意に気になり質問する。そのまま二人で相合傘をしながら歩みを進める。

 

 「……バスケ。興味無いのな。」

 

 「あんただって私のこと知らないでしょ。」

 

 「……美術部長、生徒会長及び、風紀委員指導役。名門春風大学合格した天才少女……だろ?」

 

 「肩書きばっかりじゃない。」

 

 「嫌いなものはトマト。でもパスタやピザは大好物。」

 

 「うるさいわね。別にいいでしょ。」

 

 「ゲームとアニメが大好きで昔からよく楽しんでる。」

 

 「……隠してるのに。」

 

 「修司のためにだったか?……俺は昔のど陰キャなお前と今横にいるお前の方が好きだぞ。」

 

 「あんたに言われても嬉しくない。」

 

 「そうかよ。……そうだよな。」

 

 そのまま想で暖を取りながら家まで向かった。

 

 不思議といつものテンションに私は戻っていた。彼といて楽なのはきっと演技をしなくてもいいからだろう。

 

 なんだか、スっと肩の力が抜ける。

 

 それにしても想の体は暖かいな。

 

 私はそんなことを感じながら家へと向かった。

 

 ーーーーーー。

 

 玄関手前で想と別れる。まだ雨は降っている。早く帰った方がいいだろう。

 

 「ありがとう。たすかった。」

 

 「気にすんな。……最悪の卒業式になっちまったな。」

 

 「……ほんとね。あんたいると楽だわ。……また、大学でね。」

 

 「おう。俺の大学は知ってたんだな?」

 

 「修司が入りたがってた理由の一つでもあるからね。」

 

 「俺は推薦だから困らなかったけどな。」

 

 「スポーツ指定校推薦ね。あんたって意外と真面目よね。」

 

 「……誰かに追いつきたくて頑張ったのかもな。」

 

 「何の話?」

 

 「なんでもねえ。んじゃ、風邪ひくなよ。」

 

 明るく手を振ってくれる想。なんだか、少し気持ちが軽い。

 

 幼なじみっていうのも悪くないものね。

 

 ーーーーーー。

 

 「おかえり……って、びしょ濡れだな。風呂ちょうど用意してたんだ。入ってくれ」

 

 家に着くと兄の彩が出迎えてくれる。私の濡れた様子を見て慌ててお風呂まで案内される。

 

 少し長めの黒髪に眼鏡をかけて前髪を少し分けて上げている。整えている様子から来客がいることが分かる。

 

 よく足元を見ると見慣れた靴があった。

 

 「ただいま、おにい。……シズ姉来てるの?」

 

 「ああ、突然大雨降ったろ?雨宿りにな。シズは濡れてないから、先に入れよ。」

 

 「……ありがとう。」

 

 「それと、卒業おめでとうな。」

 

 「うん。」

 

 ーーーーー。

 

 冷えたからだとベタつきをシャワーとシャンプー、リンス、ボティーソープ、洗顔剤で洗い落とす。

 

 フローラルな香りに包まれて体も程よく温められて心地よい。

 

 その後貯められたお湯に身を委ね、「ふぅ」と一息つく。

 

 入浴剤の良い香りに包まれて身体が癒されていく。

 

 「なんか疲れちゃったなあ。」

 

 湯船に浸かりながらブツブツとつぶやく。

 

 そういえば、こんなにリラックスしたのは久しぶりな気がする。

 

 ゆったりとした気持ちに不意に眠気が襲ってくる。

 

 「あ、れ……わたし。なんで……こんなに……頑張って……」

 

 意識が微睡みに沈んでいく。

 

 ーーーーーー。

 

 「やーい!真島がエロ本読んでるぞ!」

 

 「ちがっ!それはライトノベルって言ってアニメ化とかもされてる作品で!」

 

 「うわっ!アニメだってよ!オタクだオタク!!戦うためにエッチするやつだろ!女の子ばっか出てくるやつ!」

 

 「ちがっ……そういうのもあるけど!」

 

 小学生の頃大好きな小説を学校で読むのが楽しみの一つだった。

 

 その当時ハマっていた『ブレイドライン』というオンラインゲーム内とリアルが混じり合うという作品だ。

 

 ライトノベルであったが、とてもハマっていたことを覚えている。

 

 私の世代は何故かオタク文化に否定的な人達が多い世代で今でこそ世界的にアニメが人気が出たことで無くなったが、オタクは差別される立場にあった。

 

 小学生中学生までは否定される部類にあったと思う。

 

 でも何故か流行った漫画や王道週刊誌、スポーツものは人気が高くそれを見ていてもオタクとはならず、いわゆる深夜枠のマニアックな作品群を総じてオタクという扱いを受けた。

 

 ちょうどこの頃読んでいた巻出ようやくヒロインと主人公が愛を育むというシーンでギリギリを責めた描写だったのもタイミングが悪い。

 

 男子が取りあげだページはちょうど挿絵の部分。いざエッチが始まるというシーンだ。もちろんキスするぐらいまでの描写しかされていなかったが、挿絵では下着姿のヒロインと上半身裸の主人公が描かれている。

 

 「だってこれエッチするシーンだろ!」

 

 「いや、そうだけど……。もうやめてよ!」

 

 「や、やめてあげなよ。真島さん嫌がってるし……」

 

 「あ〜!また想がかばってる!やっぱ真島のこと好きなんだろ〜!」

 

 「ば!バカ言わないでよ!ぼ、ボクはそんなんじゃない!ぜ、全然好きじゃないんだから!」

 

 「じゃあ黙ってろよなあ!」

 

 「ぐぬぬ。」

 

 この当時よく絡まれていた私をよく想が庇っていた。そのせいで、私に好意があるんじゃないかと噂されていた。

 

 当時、わたしは髪もボサボサで服もジャージ。自分に全く気を使ってなくて、いつも隅っこで小説を読み家でゲームとアニメ三昧のせいで成績も振るわず、といった感じだ。

 

 想はというと、良くも悪くも平均的な成績でどちらかと言うといい子ちゃんタイプだ。誰とでも一定の距離を作っていた。私ともよくアニメの話をしてくれたりゲームして遊んでくれたりした。

 

 そう考えると昔からそこそこ仲が良かったのかもしれない。

 

 「なにさ。別に普通に面白いじゃん?アニメもゲームもオタク、別にいいじゃん?」

 

 刹那、私の目の前に王子が降りてきた。

 

 クラスメイトの光野修司。

 

 どこからか現れたか分からないけど、私の瞳はカレに釘付けとなる。

 

 「はいこれ。でも学校に持ってくるなら、これぐらいのこと起きるって身構えとかないとね。」

 

 修司はしれっと本を手渡して笑顔で去っていく。

 

 一瞬の出来事。

  それでも私の胸は高鳴って仕方なかった。

 

 それからというもの彼のことが気になって気になって仕方なかった。

 

 否定されがちなオタクな私を受け入れてくれたと感じたからだ。

 

 誰とでも偏見なしで関わってくれて前向きで明るい彼。

 

 クラスの中心で成績もよく運動もできる。

 

 見た目にも気を使っていてよく手入れされた髪に爽やかな私服。

 

 私とは何もかもが違って煌めいて見えた。

 

 サラッと常識を崩す強さと周りを巻き込む絶対的な自信。

 

 あんな風に強くなりたいと思った。

 

 私も完璧な女の子になれば、彼のそばにいれるかな?

 

 

 ーーーーーー。

 

 コンコン。

  刹那、大きなノック音に意識が覚醒する。

 

 「着替え置いとくよ〜。あとおぱんっちゅも。」

 

 「あ、え?……シズ姉?」

 

 「そうよ?……あんま長風呂しないでね。のぼせるよ。」

 

 「……ん。ありがとう。」

 

 ーーーーーー。

 

 いつの間にか眠っていたらしい。シズ姉の言う通り長風呂はのぼせる。

 

 きっと随分と入っていただろう。

 

 ゆっくりと立ち上がるが、少々目眩が起きる。

 

 「はあ。何やってんだか。」

 

 私は悪態をつきながらお風呂から出た。

 

 ーーーーーーー。

 

 「ふぅーん。中々面倒な男好きになったね。」

 

 お風呂から上がって早々、シズ姉に絡まれる。

 

 「え?」

 

 「振られたんでしょ?……修司ちゃんに。」

 

 「な、なんで。」

 

 なんで分かったの、と言い終わる前に目の前に水を出されて仕方なく飲み干す。

 

 「状況分析。……いつも完璧を演じるあなたが雨で濡れる?おかしな話よね。……カバン見たら折りたたみ入ってたわよ?」

 

 「あっ」

 

 想に申し訳ないことをしたと反省する。

 

 念の為いつも持ち歩いていたのを忘れるなんて。完全に気が動転してた。

 

 「ね、気がついてなかったでしょ?」

 

 「うん……ごめん。」

 

 「なんで謝るのさ。私は修司ちゃんに怒り爆発よ。……彩なんて家飛び出して『妹を泣かしたあいつは俺が泣かす』って言ってたよ。」

 

 「ええっ!?なんでとめなかったの!!!!」

 

 私がアタフタしてると、玄関の扉が開いて兄が帰宅する。

 

 「……コンビニ言ってたんだよ。どうせ、シズになんか言われたろ?」

 

 「…も〜やめてよ〜」

 

 わたしはそのまま疲れたようにソファに横になる。

 

 「ま、あいつはいつかぜってえ泣かす。」

 

 「おにい!?」

 

 ーーーーーー。

 

 事情を説明し、一段落したところで、シズ姉が立ち上がる。

 

 「でもさ、正直腹立つわけよ。私の可愛くて努力家な澄を泣かせるなんて。」

 

 「まあそれは俺も同感だ。30発ぐらい殴らないと気が済まない。」

 

 「足りないわよ」

 

 「なら、1万。」

 

 「ぜんぜん足りない。」

 

 「いいから、話進めて?」

 

 「ごめーん。……ま、よく分からないけど話を聞く限り二人の中に誤解があると思うのよね。……澄は修司ちゃんを高く見すぎ。逆に修司ちゃんは自分を低く見がち。そこのギャップが障壁になってると思うのよね。」

 

 「ほう?モテる女は鋭いな。」

 

 「あんたに言われるとイラッとするわ。」

 

 「……なぜ?」

 

 「鈍感野郎め。黙ってなさい。」

 

 「はい。」

 

 「要はよ。まだ澄は彼が好きな訳でしょ?」

 

 「うん。」

 

 「押してダメなら引くのが常識よ。でもそれだけじゃ面白くない。」

 

 「え、なにかここから盛り返せるの?」

 

 「私にいい作戦があるわ。今は振られたあと、言わば無敵状態なわけよ。……演じるあなたじゃなくて素直にぶつかってみなさい。……そのためにはまず、彼との開いた距離を縮めて接点をもう一度作る必要がある。」

 

 「うん、どうしたらいいの?やっぱり私、そんな簡単に諦められなくて。」

 

 「やるのね?」

 

 「うん、このままじゃ嫌!」

 

 「あんま危ないことはするなよ?」

 

 「分かってるわよ、大事な澄だもの。……それに、澄が落ち着かないと……私も進めないしね。」

 

 「何の話かわからないが、俺も協力しよう。澄と付き合わないなんておろかな奴に思い知らせてやろう。……長い思いだもんな、オレも澄には成就して欲しい。」

 

 「ありがとう!ふたりとも!!!!」

 

 ーーーーーーー。

 

 あれから数週間後。目の前に修司がいる。

 

 不貞腐れた表情が一変。私を見た事で絶句している。

 

 「想の彼女、『真島澄』。……どお?驚いた?」

 

 ファミレスのグラスに反射する私の姿。

 

 まだ見慣れない。髪色。金色に染った私の黒髪は綺麗に腰まで伸びている。

 

 色白だった肌も黒く焼けてネイルもバチバチに決めている。

 

 痛かったが、ピアスも開けた。

 

 化粧もそこまでしたこと無かったが、結構強めに入れている。

 

 カラコンも入れて、もうここまですれば完璧だろう。

 

 

 私は胸元をはだけた服で想の二の腕に抱きついて小悪魔的な視線を修司に送る。

 

 「まじ、ギャル……?」

 

 さすがの修司も同様でいつもよりへんな話し方だ。

 

 そう、そうなのだ。

 

 真面目で清楚じゃ振り向いてくれないから、ギャルになってみた。

 

 そういうことなのだ。

 

 これにはちゃんとした考えはある。

 

 だがしかし、一先ずは『強烈なインパクト』を与えることで幼なじみヒロインとしての負けフラグを回避出来たと思っている。

 

 待ってなさい修司。

 

 絶対に振り向かせて見せるんだから。

 

 私を振ったこと後悔させてやる。


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