第14話



「……俊也?」



どうしたの?と見上げれば、楽しそうな声色のはずなのに、その瞳は全く笑ってはいない。




「いえ、何でもないですよ、アンジュ。」



「…………。」



丁寧な言葉遣いを使ってはいるが、俊也の瞳の奥に、隠しきれていない獰猛な光があるのをアンジュは見つける。




「……はぁ、何でもないなんて本心では、全く思ってないくせに。」



俊也の内心に気づいたアンジュの口から、呆れの溜め息と共に言葉が零れ落ちる。



「、」



そんなアンジュに俊也が返すのは、当たり前だと言わんばかりの美しい微笑だけ。




彼女が普通の女性であったなら、間違いなく頬を赤く染める事だろう。

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