ケンジ〜流しとしての果てなき旅路

白鷺(楓賢)

プロローグ

1970年代、日本は変わり始めていた。高速道路が続々と開通し、テレビでは未来の夢を映し出す広告が日々流れていた。しかし、その賑やかさから一歩離れた下町の片隅では、変わらない静かな日常が広がっていた。


ケンジは、その街の楽器店の一人息子だった。父が一心不乱に修理するギターやピアノの音に囲まれて育った彼は、物心ついた時から音楽が生活の一部だった。15歳になったある日、古いギターを手に取ってみた。その音は、ケンジの胸の奥に眠っていた何かを目覚めさせた。時代が移り変わっていく中で、自分は何をするべきか、その答えが音楽にあると感じた瞬間だった。


「俺の音楽を届けたい」——そう決意したケンジは、故郷の町を離れ、ギター一つを抱えて旅に出た。流しのギター弾きとして、どこへ行けば誰かが耳を傾けてくれるだろうか?その答えを見つけるため、ケンジの果てなき旅路が始まる。


彼のギターの音色は、夜の酒場から静かな病院の一室まで、あらゆる場所で響き渡る。音楽を通じて出会う人々の笑顔や涙、そしてケンジ自身の心が、その旋律に乗せて紡がれていくのだった。

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