温かな春がくる

若福清

第1話 これからも色々と付き合ってね

登場人物。


山西やまにし太希たいき

性別:男

年齢:23

身長:176


神川かみがわ水樹みずき

性別:女

年齢:23

身長:162





まだまだ寒い2月の夜。

山西やまにし太希たいきは冷えた身体を温めるために

こたつに深く入っている。


そんな太希のスマホが鳴る。


太希が画面を確認すると高校の時から付き合いがある神川かみがわ水樹みずきからの電話だった。


「あい?」


そう少し鼻声はなごえで太希は電話にでる。


「太希君。今からイルミネーション見に行こう。」


そう言う水樹の声は太希とは違って元気いっぱいだった。


「イルミネーション?外に?」


「当たり前でしょ?」


そう水樹は少し呆れた声で言葉を返す。


太希の目線は窓の外に向く。


「…嫌だよ。寒い…」

「じゃぁ。待ってるから。

車で迎えにきてね。よろしく。」


そう水樹は太希の言葉をかき消して早口で言うと一方的に電話をきる。


太希は無言で静かになった自分のスマホを見つめる。


「…行くかぁ。」


そう太希はダルそうな声で呟くと寒い外の世界に出かける。



「おぉ。綺麗だね。」


そう水樹は並木道に飾られたイルミネーションを見上げて声をげる。


「ほらほら。太希君、なにやってるの?

この先に大きなツリーに飾られたイルミネーションもあるんだよ?」


そう水樹が後ろをトボトボ歩いている太希に声をかける。


「よく、こんな寒い日にそんなに元気でいれるなぁ。さっき道路にあった気温計きおんけいは2度だったぞ?寒いよ、本当にもぉ。」


そう太希はブツブツ文句を言いながら歩く。


そんな太希に水樹は呆れたため息をこぼすと太希の左腕に抱きつく。


その水樹の行動に太希は「え?!」と言って驚く。


「これで少しは温かいでしょ?」


そう水樹は可愛く微笑む。


「こうやって歩いてると私達、まるでカップルみたいだね。」


そう水樹が嬉しそうな声で太希に話しかける。


その言葉に太希はなんと言葉を返せばいいか分からなかった。



「おぉ。大きい~。」


そう水樹は大きな広場の真ん中に立っているツリーを見上げて声を挙げる。


そのツリーには色んな色に輝くイルミネーションが飾られている。


その光景はまるでおとぎ話の世界の様に美しかった。


「綺麗だね。太希君。」


そう水樹は感動した声で言う。


嬉しそうな表情をしている水樹の方へ太希は軽く目線を向ける。


その後、目線を目の前の大きなツリーに向けると小さな声で「あぁ。綺麗だな。本当に。」と答える。


「ありがとうね。付き合ってくれて。」


そういきなりお礼を言われて太希は驚く。


「なんだよ。急に。」


「昔からそうだったよね。」


「え?」


「私の我がままに太希君は文句を言いながらも付き合ってくれる。」


不思議そうな表情をしている太希に水樹は目線を向ける。


「本当にありがとう。

そして、これからも色々と付き合ってね。」


そう水樹は満面の笑みを見せる。


そんな水樹の笑みに軽く微笑むと太希は目線をツリーに戻す。


「りょ~かい。」


そう太希は嬉しさを隠して小さく返事を返す。



そして、数日後の2月14日の昼。

太希は仕事部屋で仕事を進めていた。

太希の仕事はWeb小説家だ。

依頼された作品を書いたり、ネットの小説サイトに自分の作品を投稿したりしている。


だが、今日はどうも調子が悪い。

全然筆が進まないのだ。

(実際はパソコンで書いてるので正しくは指が進まないである。)


かれこれ朝から5時間ほどパソコンの前で文字をうっては違うと言って消し、また文字をうつを何回も繰り返している。


「今日はダメだな。」


そう諦めた太希は仕事部屋を出る。


そしてそのままキッチンに向かうと

インスタントのミルクティーを作る。


そのミルクティーを持ってこたつに入るとスマホを確認する。


すると水樹からメッセージがきていた。


〔今日、太希君の家でバレンタインパーティーをやるのでチキンを買っておくように。〕


「バレンタインパーティー?なんだそれ?それにチキンはクリスマスに食べるものじゃなかったか?」


そう言いながら太希は首を傾げる。


その後、太希の目線は窓の外に向く。


「…外…寒そうだなぁ…。

でもまぁ、暇だし買いに行くか。」


そう呟くと太希は“了解”とメッセージを返す。

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