第19話 腹の虫

 ぐう。


 山越くんのお腹から聞こえたその音はきっと、山越くんの胃が空であることを知らせているのだろう。

 ちなみに今は1時間目だ。


「筒井さん」

「なに?」

「今のは聞かなかったことにしてくれないかな……」

「私まだ何も言ってないよ?」

「これはその、僕の腹の……虫が誤作動を起こして……」


 それはそれで大問題だよ山越くん。誤作動って何。


「あとでお菓子あげるよ」

「いいの?」

「うん」


 山越くんは見るからにつらそうだ。それを見て放っておく方が難しい。




 休み時間、山越くんは私があげたお菓子を食べていた。山越くんは口が小さくて、リスみたいだった。


「山越くん、弁当は?」

「ない」

「焼きそばパンは?」

「売り切れてた」


 お菓子を食べ終わった山越くんは、言った。


「この恩は忘れない。今度僕が特製の焼きそばパンを作ってくるよ」


 どこまで冗談か分からないことを言って、山越くんはどこかに行ってしまった。

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