この街を統べる者達

第1話




バタバタバタッ



「追え!捕らえろ!絶対に逃すなっ!!」



ここは闇に紛れる住民の暮らす場所。

いつもならば不気味な程静かで、誰もがこの地に足を踏み入れるのを嫌がる。

だかそれはいつもならば....の話で、

どうやら今日は様子が違うようだった。

 



「クスッ....やってるやってる」




その辺り一面を見下ろす事のできるビルの屋上で、全身を黒で包み、フードを深く被る1人の人物が呟いた。



その人物の口元には不気味な程、綺麗な孤が作られていた。



 

「死ぬ気で逃げなきゃ、捕まったらお前ら全員、殺されちゃうかもなぁ....クスッ

 俺の事、嗅ぎ回ったりするからこんなことになるんだぜ?」




背筋が凍るような低く冷たい声が響く。

その声に感情はなく、その眼にも冷たい光が見えるだけ。





 


『そろそろこの光景も見飽きた』




そんな事を思い、月に目を向ける。

静かに凛と佇むその姿に、想いを馳せていたその時だった。






「.....カンッ、カンッ、」





そんな音が響いた気がした。

静かに目を向けると、月夜に照らさせて出てきたのは....


この街を統べる闇の 「帝王」 だった。








『どうしてあいつがこんな場所に?

滅多に顔を出す事はないと聞いていたが....』






そんな事を思いながら、男は静かに身を潜め気配を消す。


フードをもう一度深く被り直し、闇に身を紛れさせた。

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