第12話:配信準備

 金曜日の夜。一応、明日からがゴールデンウィークだけど、まぁ実質今日からみたいなところあるから、ゴールデンウイーク0日目。


 いつもは午後10時くらいからきりとえいなと通話をしているが、今日は8時から通話を始めていた。


 明日休みだからちょっとでも長くゲームをするため……ではなく、今日の9時からとあることが始まるからだった。


 そう──。


『──あー、あー! 聞こえるー?』


「おー、すごい。めっちゃクリアに聞こえてるよー!」


『ふふん。わたし御用達のマイクだから。それで、他の設定は……』


『あらかたできてると思うけどー……一応画面共有するねー!』


『ん』


 なきりの初配信である。


 時間があるときにえいなの指導の元、ちまちまと準備を進めていき、なんとかゴールデンウィークに間に合ったのだ。


 Amezonで買い揃えればもっと早くに準備が終わってたと思うけど、なんでも『機材は、実際に触って買うのがべすと。総理大臣も言ってた』とのこと。


 総理大臣はさすがに言ってないと思うけど、経験者の意見は聞いたほうがいいからね。僕たち3人で頑張って選んできました。


 きりとえいなだけでも買えるけど、僕も同伴してきました。


 こんな絶世の美少女2人だけだと絶対ナンパされる、っていう僕の勝手な心配ももちろんあるけど、それよりも2人から『そーた(ん)一緒じゃないとやだ』って声を揃えて言われちゃったんだもん。


 あんな可愛さの暴力、誰も抗えないよ……。


『──ん。できてる……と、思う』


『思うじゃ困るんだけど!?』


 僕がそんなことを思い出していると、えいながきりの配信準備のチェックを終えた……っぽいことを言っていた。


『多分、大丈夫。何かあったら、わたしがすぐ行くから、きっと』


『不確定要素が多く感じるのは私だけ……?』


「めちゃくちゃ保険張るじゃん」


『「最後の責任は、絶対に自分が持つな」っていう教訓の下』


「『まさかの最悪の教訓!?』」


 僕らは通話越しに笑い合う。この3人で通話してる時点で、通常運転になっちゃうのはしょうがないことだよね。


 それにしても……えいながいるおかげもあって、ずいぶん早く準備終わっちゃったなぁ……。


『あと40分後かー』


 きりも僕と同じことに気づいたようで、そんなことをつぶやく。


『1戦、いっちゃう?』


「『いっちゃう!』」


 それだけ時間あったら、ゲーマーの僕たちがゲームしないわけないよね!


 えいなの提案に、僕たちはノータイムで頷き、また笑い合った。


 僕とえいながApaxを起動しながら、僕はふと思ったことを口にする。


「配信ってことは、やっぱたくさんの人が来るんだよね」


『ん……そりゃあ、まあ……配信だから』


『初配信だから100人は行かないと思うけどね』


 うーん、それはそうだろうけど……。


「やっぱそれでも、きりの声が不特定多数の人に聞かれるのは、なんかもやってするよね……」


『『!?!?!?!?』』


「あ、ちょっとトイレ行ってくるねー」


 そう言って僕は少し離席する。


 一方その頃、女子2人は……。


『『そ、そーた(ん)って……独占欲強め……?』』


 ほおを染めていたのだった。

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