初恋あやかしカレー

1.幻のカフェへようこそ

第1話

「いらっしゃいませ!」

小春こはるちゃん、今日も元気だね」


 カウンターの中から出て年配のお客さんにぺこりとあいさつしたら、頭をぐりぐりとなでられた。どうも常連さんたちには孫か仔犬のように扱われている気がする。


「おっと、あんまり小春ちゃんにかまうとオーナーに怒られるな」


 お客さんがわたしの背後を見て笑った。

 振り返ると、そこにいたのはこのカフェのオーナー。オーナーといってもまだ若い。高校を卒業したばかりのわたしよりも六、七歳年上、二十代半ばに見える。

 いつもは穏やかなオーナーが、お客さんに向かってしかめつらをしていた。


左京さきょうさん、そんな顔してどうしたんです?」


 王陰寺おういんじ左京さん。旧軽井沢きゅうかるいざわにある小さなカフェレストラン『月夜つきよのお茶会ちゃかい』のオーナー兼シェフだ。

 すらりとした体格で、わたしより頭ひとつぶんは背が高い。優しそうな顔立ちはびっくりするくらい整っていて、雑誌に出ているモデルさんのよう。

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