怠惰の魔王は眠りたい〜世界を滅ぼした魔王、転生した未来で惰眠を貪る〜

夜叉丸

プロローグ

凡そ5000年前、この世界は1度滅びていると言われている。


 邪神の復活、龍の逆鱗に触れた、神に背き敵対したなど、頂上の存在により滅ぼされたのでは無いのか?と様々な憶測が飛び交っているが、事実は異なる。



それは1人の人間によって滅ぼされたのだった。




【魔王】






 この世界を滅ぼした者はそう呼ばれているとされる。この説を信じているものの中ではこの魔王についての論争が続いてやまない。


 一体どこの誰なのか?どうして世界を滅ぼしたのか?どの様な力を持っていたのか?世界を滅ぼした後、どこに行ったのか?


 様々な疑問が浮かんでくるが、それらが解決したことは1度もない。何故ならば、記録が残っていないからだ。


 魔王に関する資料を探してみても、何処の地域に行っても、まるでそこだけが破り取られ、破壊されたかのように消えているのだ。


しかし、ある遺跡にこんな文章が残されていた。


──彼らを恐れよ。


──彼らの逆鱗を踏んではならぬ。


──後世の人類よ。ありとあらゆるあまねく種族よ。私たちの二の舞をしてはいけない。


──魔王達には絶対に勝てない。


─────────────

───────────

───────



 文章はこれだけであったが、魔王によって世界が滅んだのではないか?と、言われる原因となるには十分すぎた。


ここで記された【魔王】。


その存在は未だに明かされていないが、文章には不穏なものがあった。


──『魔王達』


 これはその配下のことを示しているのか、それとも魔王が複数人いる事を示しているのかはハッキリしていない。


 しかし、他の記録を調べてみると、魔王は大男とも、幼い少女だとも、老人だとも、少年、あるいは少女だとも書かれていた。


様々な憶測が憶測を呼び、やがて原型を留めないほどに噂が拡散していく。


だが、どれも事実でないことは確かだろう。


 我々は先人の助言に従い、魔王の逆鱗に触れないように気をつけねばならない。もし、魔王が本気を出したのならば、世界どころの話でなくなってしまう。


 そんな確信を私は持っている。だからこの研究を辞めるつもりは無い。人類よ。この世界は未知と危険で溢れかえっている。


それが人類への祝福となるのか、それとも災厄となるのか、それはだれも分からない。


 しかし、これを読んでいる君達の未来に幸多からんことを祈っている。また会う機会があれば、君達の未知の体験を是非聞かせて欲しい。


『世界の崩壊について〜魔王とは〜』

 より1部抜粋

『著者:カーマイン・ネル』


—————————————


俺は読んでいた本を閉じる。


「ふぅ、寝る前に読む本ミスったな。こんなの読んでてどこまでバレているのかビクビクしちゃったじゃないか」


 5000年前なんだぞ?なんでこんなに的確に資料だけで考察できるかなぁ。これ、どこの遺跡なの?今から破壊しても間に合わないだろうなぁ……


「むしろ破壊したのが誰かで話題になって寝ることもできなくなるんじゃなぁ」


 うーむ、これは困った。もしかしたら俺が魔王だってことがバレるかもしんない。…まぁ、どうでもいいか。俺が魔王ってバレなきゃなんの問題もないわけだし。幸いなことに5000年前とは姿も違うし、あいつらに見つかっても魔力さえ見せなければバレなバレない。


「さぁーて今から寝ると「ベルーちゃーん?朝ごはんよー!」……」


 ちっ、寝るのはまた今度にしてやろう。母さんの朝ごはんを食いそびれるのは勿体無い。あれは100年間だらける事よりも優先される。5000年前もあんな料理があったらもう少し文化も残してやったんだけどなぁ。


「はーい!今行くよ母さん!」


 俺はモゾモゾとベットから降りる。ああ、愛しのベット、あと一時間したらまた戻ってくるから少しの辛抱だ。それまで我慢してくれよ。母さんの料理とベット。この二つを同時に味わえればいいのだが、母さんにそれを言ったことがあるがその瞬間、物凄い寒気に襲われた。……あれはマジで死を覚悟した。この魔王を恐怖させるとはフフフ、母さんは恐ろしいぜ。


たっぷりと20分かけて俺はベットから降りると軽快なステップで俺は階段を降りる。


「待てろよ俺の朝食!」


あっ、階段踏み外した。


ガシャーン!


「ちょっとベルちゃん!?大丈夫!?」


「うん、大丈夫大丈夫」


ふっ、この程度、どうということはない……あ、でもめっちゃ眠いわ。このまま寝ちゃうか?いや、それだと母さんの朝食が食べられない!!


「母さーん!ご飯!」


「あらあら、ベルちゃんは本当にお母さんのご飯が好きよね。すぐに準備するからベルちゃんも手伝って」


「はーい」

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