第36話 サムライガール、インフルエンサーになる!?

瑠奈は、大学に通いながら、流行りのインフルエンサーを目指していた。テーマは「**現代のバンコクで生きる!サムライガール**」。


「よっしゃー!今日の動画は、これでバズるっしょ!」


瑠奈は、自撮り棒を片手に、バンコクの最新スポットをレポートしていた。


「みんな、サワディーカ!今日は、インスタ映えすると噂の、このカフェに来てみたよ!見て、この可愛いスイーツ!マジ卍~!」


瑠奈は、スマホのカメラに向かって、満面の笑みでポーズを決めた。


しかし、その瞬間、頭の中に住む戦国武将・山田長政が、待ったをかけた。


「**待て、瑠奈!武士たるもの、そのような軽薄な言葉遣いは慎むべきじゃ!**」


「うっさいなぁ、長政さん!今は令和時代!バズるには、こういう言葉遣いも必要なんだってば!」


瑠奈は、心の中で長政に反論しながら、撮影を続行しようとした。


「**それに、そのような贅沢な場所に行くとは何事じゃ!質素倹約を旨とするのが武士の道!**」


「ちょ、ちょっと待って!長政さん!今、超大事なシーンなのに!」


瑠奈は、思わず声に出してしまい、周りの人々に怪訝な顔をされた。


「瑠奈、大丈夫?誰と話してるの?」


親友のレディーボーイ、ソムが心配そうに尋ねてきた。


「あ、ううん、なんでもない!ちょっと、頭の中で…ね」


瑠奈は、苦笑しながらごまかした。


瑠奈のインフルエンサー活動は、長政の武士道精神との葛藤の連続だった。


高級ブランドのタイアップ動画の撮影では…


「**瑠奈よ、そのような金まみれの商売に加担するとは何事じゃ!武士は、己の信念を貫き通すべきじゃ!**」


長政の言葉に、瑠奈は思わず撮影を中断せざるを得なかった。


「ちょ、ちょっと待って!長政さん!これ、超高額な案件なんだよ!?」


瑠奈は、心の中で長政に訴えたが、長政は聞く耳を持たない。


「**金に目がくらむとは、情けない!武士は、義を重んじ、利を軽んじるもの!**」


「もう!わかったよ!じゃあ、どうすればいいのよ!?」


瑠奈は、半泣きになりながら、長政に問いかけた。


「**瑠奈よ、真の強さとは、己の信念を貫き通すことじゃ!たとえ、それが困難な道であっても!**」


長政の言葉に、瑠奈はハッとした。


「真の強さ…か」


瑠奈は、長政の言葉を胸に、再び動画撮影に臨んだ。


「**待て、瑠奈!その衣装は、あまりにも肌の露出が多いのではないか!?武士の娘として、恥ずべきことじゃ!**」


「ちょ、ちょっと待って!長政さん!これ、最新のトレンドファッションなんだよ!?」


瑠奈は、頭を抱えながら、長政との戦いを続けるのであった。



亀次郎、参戦!


ある日、瑠奈は、動画の企画で、亀次郎を巻き込むことにした。


「亀次郎さん、私の動画に、ちょっと出演してくれない?」


「動画?なんだい、そりゃ?」


亀次郎は、首を傾げた。


瑠奈は、スマホを取り出し、動画を見せながら説明した。


「ほら、こうやって動画を配信して、たくさんの人に自分のことを知ってもらうんだよ」


「へぇ…面白そうじゃねえか!よっしゃ、やってやるぜ!」



亀次郎は、目を輝かせた。


しかし、亀次郎の動画出演は、予想外のハプニングを引き起こすことになった。


「**瑠奈よ、あの男は何者じゃ!?その風貌、あまりにも武士道からかけ離れているではないか!**」


長政は、亀次郎の姿を見て、激怒した。


瑠奈は、苦笑しながら、長政に説明した。


「あの…長政さん、亀次郎さんは、昭和時代からタイムスリップしてきた人で…」


「**昭和時代…?タイムスリップ…?**」


長政は、ますます混乱した様子だった。


瑠奈は、仕方なく、亀次郎と長政に、お互いの自己紹介をさせた。


「どうも、亀次郎です!江戸っ子生まれの、粋な男です!よろしく!」


亀次郎は、カメラに向かって、ニヤリと笑った。


「**わしは、山田長政!戦国時代を生きた武士じゃ!**」


長政は、頭の中で、堂々と自己紹介をした。


「**しかし、あの男…あまりにも不憫じゃ…**」


長政は、亀次郎の姿を見て、呟いた。


「え?長政さん、今の聞こえたよ!?」


瑠奈は、慌ててツッコミを入れた。



珍道中、始まる!


こうして、瑠奈、長政、そして亀次郎による、珍妙なインフルエンサー活動が始まった。


瑠奈は、長政の武士道精神と、亀次郎の昭和時代の価値観に振り回されながらも、動画撮影を通して、様々な経験をしていく。


ある日、瑠奈たちは、バンコクの寺院で、動画撮影をすることになった。


「**瑠奈よ、寺院とは、神聖な場所じゃ!敬虔な心で参拝するのだ!**」


長政は、瑠奈に注意を促した。


「わかってるよ、長政さん」


瑠奈は、心の中で返事をしながら、寺院の中に入っていった。


亀次郎は、寺院の荘厳な雰囲気に圧倒され、静かに手を合わせていた。


「**ほう…なかなか立派な寺院じゃのう…**」


長政も、感心した様子だった。


しかし、その静寂は、瑠奈のスマホの着信音によって、破られた。


「**瑠奈!何事じゃ!?そのような騒々しい音を出すとは、不敬千万!**」


長政は、激怒した。


「ご、ごめん!長政さん!ちょっと、仕事の関係で…」


瑠奈は、慌ててスマホを取り出した。


それは、高級ブランドとのタイアップ案件の連絡だった。


「**待て、瑠奈!また、あの金まみれの商売か!?武士は…**」


長政は、再び説教を始めようとしたが、瑠奈は、それを遮った。


「長政さん、ちょっと待って!今回は、本当に大切な案件なんだ!この案件が成功すれば、私の夢に近づけるんだよ!」


瑠奈は、真剣な眼差しで、長政に訴えた。


「**瑠奈…お主の夢とは…?**」


長政は、瑠奈の言葉に、心を動かされた。


「私の夢は…タイと日本の文化の架け橋になること!そして、いつか…長政さんの故郷、佐賀県に、タイの文化を紹介する施設を作りたいんだ!」


瑠奈は、目を輝かせながら、自分の夢を語った。


「**瑠奈…**」


長政は、瑠奈の熱い想いに、心を打たれた。


「**よかろう!わしも、お主の夢を応援しよう!**」



瑠奈、覚醒する!


こうして、瑠奈は、長政の協力も得て、インフルエンサーとしての活動を本格化させていく。


動画のクオリティは上がり、フォロワー数も着実に増えていった。


しかし、瑠奈は、フォロワー数や収益よりも、もっと大切なことに気づき始める。


それは、「**自分の発信を通して、誰かを笑顔にしたい**」という気持ちだった。


「長政さん、私、わかったよ」


ある日、瑠奈は、長政に語りかけた。


「**何をわかったというのじゃ?瑠奈**」


「私、インフルエンサーとして、ただ有名になりたいわけじゃない。私の発信を通して、タイと日本の文化交流を促進し、世界中の人々を笑顔にしたいんだ!」


瑠奈の言葉に、長政は深く頷いた。


「**瑠奈よ…お主は、真のサムライじゃ!**」


瑠奈は、長政の言葉に、笑顔で応えた。


「ありがとう、長政さん」


瑠奈のインフルエンサー活動は、まだまだ続く。


それは、不憫で、可笑しくて、そして、ちょっぴり感動的な、サムライガールの物語。

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